北海道株式会社のケース(8)vol.066

シナリオを読むと、この会社の強みがよくわかる。
正確に言えば、シナリオを伝票や勤怠記録と併記させながら読むとわかる。

ストーリーの進行が冗長になる部分の動きで、無駄なコストが発生している。
そこが改善ポイントだということに、シナリオを読むことで自然に導かれる。

改善の方法は、他の仕事の経験値が増えていくにつれ、見つけるまでの速度がアップする。

あなたは、いくつかの得意先を指定し、そことの付き合いについて調べてみた。
初めての取引データと、その後数回のデータを並べたリストを作ってみる。

次に、同種類の依頼内容を指定した。得意先は指定せず、ランダムだ。
これも、初回取引から数回分並べた取引データのリストを作ってみた。

(とんでもない実力だ)
いずれのリストも、初回と2回目以降の粗利の差が歴然だ。
というか、懸絶している。

同じ相手、同じ種別の仕事なら、2回目から驚異の生産性を実現しているのだ。
マニュアルの効果は抜群だ。

また、リスト化した中に、2回目以降の実績が初回と変わらない取引もある。
何らかの事情で、生産性が向上しなかったのだろう。

そういう場合は大抵3度目がない。
つまり、質の良くない仕事に対する手離れが実に良い。
これにも驚かされた。

同じ失敗を2度繰り返さない、というだけでなく、自らの経験を次の行動に活かすのが格別に上手なのだ。

いわゆる「レバレッジを利かせる」ことに長けている。
最初に勤めた会社での、社会人としての生い立ちが、次の会社に活きている。

(原価を細かく算出するのも、やはり将来への布石なのだろう)

一つひとつの事柄を取り上げて、愚直なまでに計算し、コスト感覚を体に叩き込む。

パイプ椅子1脚のレンタル料金を、単なる「数字」と捉えると、改善手段はコストダウンに限定されてしまう。

しかしそれを「売上に反映されるまでのプロセス」とすれば、その改善には多角的に着手できる。
そういったことを繰り返してきているのだ。

あなたは内心、胸をなでおろした。

『こうすれば、会計処理はもっと簡素化できますよ』なんて言っていたら恥をかくところだった。
やはりそれは、「てにをは」レベルだ。経営は作文ではないのだ。

社長は、『プロフェッショナル』という概念に憧れはしたが、観念論の通じない現実も見通して、彼なりの形で憧憬を顕現化している。

それがこのノートだ。

マニュアルが整いすぎていて、社員側からは一見、自由度が低いように見えるかもしれない。

(『プロ』について語る大卒者が不満を持つのは、表面だけを見るからか)
気持ちはわからなくもないが、プロならこの環境における独創性を見出したらどうなのかという気がする。

実際、初見のあなたから見ても、マニュアルは不完全だ。
シナリオにも冗長なところが、まだ多く見られる。

この程度で「決められたとおりにしか動けない」と思ってしまうなら、それはプロにあるまじきことだ。
拓くべき道は、まだまだ無数に存在する。

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