北海道株式会社のケース(6)vol.064

(しかし、どんな大企業だって最初は零細だ)
それに、この社長をサポートしたいと考える人材だって、いても良いはず。

確かにそういう人もいたという。
社員の話を聞くのが好きな、少し頼りないトップとなれば、いわゆる参謀志向でそれなりに経験を積んだ人材からすると、活躍の場を見つけたような気がして、北海道社は魅力的な環境に見えるだろう。

(参謀ポジションを狙って入社した人たちは、その後どうなったのか?)
【法人】のデータから数名がピックアップできたが、在籍年数は平均で1年といったところだ。
これは意外だった。
1年ひと回りで様子を見た結果、愛想が尽きてしまうのか?

(あるいは、社長の先輩だったナンバー2の社員が、ポジションを奪われまいとして追い出したのか?)
それも考えたが、【法人】はそれを否定した。

「彼は現場好きで、会社の中で管理業務に携わるのを苦にしていました。社員が増えてくると、『管理面が得意な人材を抜擢して、自分は現場業務に専念させてほしい』と、度々社長に進言していました」

とにかく野心のない先輩で、入社したときには自分のほうが一つ年下の後輩だった新社長にとって、誰よりも安心できる人柄だったようだ。

いつの間にかあなたは本筋を外れ、「どうしたらプロフェッショナルな人材を獲得できるか」という方向へ思考をスライドさせてしまっていた。

(いけない)
それは確かに北海道社にとっての重点事項かもしれないが、問題の核心ではないとあなたは思っている。
考える対象としては魅力的だが、各論に落ち着いてしまっては「【法人】鑑定」にならない。

あなたはようやく
(財務諸表を見よう)
と、コンサルっぽい切り口に目を向けた。

今さらようやくそれに気づいたということは、目の前の【法人】には悟られたくない。

でも、普通のコンサルタントではないから、最初に財務データに関心を持たなかったことは恥でもないかと思い直したりして、まだあなたの基本スタイルは定まっていない。

財務諸表が画面に表示された瞬間、あなたはハタと気づいた。

数字の内容ではない。一目見た瞬間、それをきっかけに全く別の疑問が湧いたのだ。

(この会社の『強み』とは何か?)

《続く》

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