北海道株式会社のケース(6)vol.064

『プロフェッショナル』という言葉は、彼ら学生から発されたものだった。

若い経営者二人に対し、大学生たちの、少し小馬鹿にしたような「教えてやっている」といった態度は、社長のかつての記憶を呼び覚ました。

最初に3年勤めて放り出された会社でも、彼に接する社員たちは最初からこんな風だったな、と思い出したのだ。今思えば、それはこういう『プロフェッショナル』だからこその強さの表れだったのかもしれない。

(会社をやっていくには、こういう強さが必要なのだ)
社長は純粋にそう思い、プロフェッショナルという言葉に強い憧憬を感じた。

我を立てることのない彼の先輩も同じように思ったことが、北海道株式会社の人材獲得の基本姿勢につながった。

「社長は採用面接のときに、“プロの仕事”ということについて応募者と語り合うことに時間をかけますが、その時の話の展開力がある人物の採用率が最も高いです」
あなたはそれをニヒルな気持ちで聞いていた。

(薄っぺらな内容をペラペラしゃべるこけおどしも、その中には随分いただろう)
【法人】はさっき、社長のことを世間知らずなところがあると言ったが、そういう人間を見抜けないことが多かったと想像できる。

だが、仮に本物のプロが入社したとして、果たしてこの会社に長く留まってくれるだろうかとも思う。
それが難しいことは、北海道社にやってきた大学生たちが、既に示しているといえる。

目覚ましい実績を出したというゼミの大学生たちは、短期滞在だからこそ、北海道社を選んだのだ。
レポートを書いてしまえば、あんな小僧ふたりがやっている“サークル以下”の会社に用は無い。

うるさい年寄り相手に気を使う煩わしさがなく、割と事務所が広くて数人で使えるという点が魅力だったから声をかけたというのが本音だったのだろう。

ゼミのメンバーに、社長は熱心にオファーしたが、にべもなく断られたと【法人】は言う。
エリート指向の大学生に、北海道社は何の魅力も感じられなかったということだ。

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