宮城県株式会社のケース(7)vol.118

(しかし……)
とあなたは思い直す。

今“綺麗ごと”を語っているのは【法人】だ。
これまでの実例からすれば【法人】は、社内で起きたことは、データさえ存在すれば隠すことなく必ずあなたに提供してきた。

社長の言行が本当に一致しているかどうかと、中間で社長の想いを捻じ曲げる幹部の有無と、末端の社員たちの本音会話などが、あなたには確認できる。

それに、先ほど【法人】が口にしたいくつかの施策は、いずれも既に実施されて制度が構築されていたり、キャッシュの捻出も行われ、実際に支出されている。

社長の真意はどうであれ、既成事実は疑いようもない。

(新社長が「人」、又は「人が働く環境」に投資している事実は確かなようだ)
そう思わざるを得ない。

(ということは)
継続的に高い投資効率を上げ得る安定的体制を築くため、『人件費投資』『職場環境投資』を主軸に投資計画を立て、少しプレミアムな要素を会社に付け加えた、ということか。

「そのとおりです」
理解の遅い相手がようやくついてきたか、といった語調で【法人】は納得し、話を続けた。

それによると、さすがに社員保養施設やゴルフ会員権のような過度な福利厚生は用意しておらず(さすがにそれはやりすぎだろう)、そういう意味でのプレミアムではないようだ。

しかし、財形貯蓄、社員持株会、社内融資などのインセンティブや育児休業と復帰後の段階的復職制度、また随時のフリーエージェント制度など、一度採用した人材をできるだけ長く留保することを特別に重視した制度が組まれている。

個人が業務の中で培ったナレッジを標準化させるためと思われるが、積極的な職種技術のコンペ開催など、経験値の解放には多くの工夫が凝らされているのが特徴的だ。

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