岩手県株式会社のケース(17)vol.109

(オヤオヤ?)
次からは、実際に『ビールの指輪』が使われるビアガーデンの話が始まり、インタビューを受けているのはビア社の広報担当だ。

岩手社が成し遂げた指輪の技術については話のマクラ程度にしか触れておらず、9割以上は店舗の宣伝と、これからの自社の事業展開をアピールしているだけで話が終わっている。

あなたにとっては忌々しい話だが、ビア社がこの記事掲載の売込みに対し「岩手社が勝手にウチとの契約に水を差した」とヘソを曲げて報復に出かねないと配慮し、ここまでを狙い打ったのもあなただ。

ビア社には手切れ金代わりにしっかりとアメをしゃぶらせておく。

誌面を見ていくうちに気づいたが、広告がかなり入る。巻頭特集とはいえ、確保されたページのうち大体3割くらいは広告であるようだ。

記事自体のページ数からすると、全体のうち約5割は工場のこと、3割程度がビア社のことだ。

(あと2割。ここが問題だ)
あなたの真の狙いは、スタビライザー技術の継承ではない。

この記事をきっかけにしたムーブメントを業界内に起こし、飲料メーカーにけん制球を投げるのが目的だ。

もともと、ビール供給機の内部に仕込めばよい機能であるのに、同社の傘下にある開発会社が、コスト削減でいい子になろうという保身マインドでビア社の要求を断ったため、岩手社にムチャぶりされたのがきっかけだ。

それがもつれてこの体たらくになっている。

本来、ここまでの機能を持つ仕組みを、指輪に仕込むほどのサイズで、しかもそれを格安で装備させるなど、土台ムリな話なのだ。

是が非でも、供給機側にスペースを作らせなければならない。

しかし、当事者たちだけでは、もはやこの単純な理屈を実行に移すことはできない。
きっと、犠牲者を出すまで……。

《続く》

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