岩手県株式会社のケース(17)vol.109

『下町発! アクセサリーに込められたスーパーエレクトロニクス』

業界最大手の週刊ビジネス誌に、巻頭特集が組まれている。
あなたの手は興奮で少し震えている。
おぼつかない指先で目次ページを確認すると、なんと18ページにもわたる大きな取り扱いだ。

(こんな内観だったのか)
初めて見る岩手社の工場内。

あなたの想像では、もっとゴチャゴチャした場末感いっぱいのイメージだったが、意外にすっきりと落ち着いており、工作機械や素材なども整然と置かれている。

そして、初めて見るオヤジさんの顔。
これも、小柄で油まみれの黒い顔という、あなたのベタな想像を裏切り、痩せ型の長身で、整った穏やかそうな顔立ちだ。『工場のオヤジ』というよりも『研究室長』とでもいうほうがふさわしいかもしれない。

(よかった。先にこれを見ていたら、あの文章は作れなかったと思う)
あなたは胸をなでおろした。
しかし、本当にあの文面を元にファックスを送ったのだろうか。

疑問はすぐに氷解した。

記事の書き出しは、「編集部に送られてきた1通のファックス」のことから始まっている。
雑誌社が岩手社から受けた文章の抜粋が、そのまま転記されているようだが、その8割方はあなたが【法人】の前で起草したままの文章が使われている。

かなり鳥肌が立った。
なんとも恐ろしいことに思えたのだ。

あなたの示唆(この場合は明確に文章だが)は、【法人】にここまでの影響を与え得るという事実に、今はっきりと直面したわけだ。

奮える指でページを繰っていくが、実は文章はほとんど頭に入ってこない。
どんなテーマで各ページが彩られているか、ぐらいの捉え方で、ざっくりと目を通す。

(18ページも書くことがあるのだろうか?)

意外に思ったのは、オヤジさんの想いについては、見開きで4ページ程度しかないことだ。工場の紹介記事的なページを含めても5ページ半から6ページにとどまっている。

それこそ、「あと12ページも、一体何を載せているのだ?」といった感じだ。

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