北海道株式会社のケース(2)vol.060

社員7~8名の小さな会社だったが、充実した毎日になった。

ここには学歴差別などはなかった。
できる者は力不足の者を助け、雑用は全員で協力した。

新参の彼も、大きなイベントなどの仕事に参加させてもらえた。
彼にとってそれは、心の底からの喜びだった。

一方、社長にとっても嬉しい誤算だった。

彼のことは幼いころから知っており、あまりテキパキ動けるタイプでないことはよくわかっている。
イベントを担当するには難があると思っていた。

しかし、ここで親友の息子を放っておけば、一家は路頭に迷い、悲惨なことになるのは明らかだった。

だから、創業からずっと経理を手伝ってくれる妻と十分に話し合い、いわば家族ごと面倒を見る覚悟で採用した。

そんな社長の心意気を知る社員たちも、まだ少年だった彼を気遣っていた。

しかし、入社後の彼をよく観察すると、一つひとつの仕事が完璧だった。
顧客対応、会場手配、資材の段取りから金銭書き付け書類の扱いまで、彼が仕上げた事柄は見事な出来映えだった。

前の会社で働いたとき、ミスのたびに受ける罵倒を回避するために身に付けた働き方だった。

自分の要領の悪さを自覚していた彼は、聞いた話を端的に書き留める習慣を身に着けていた。
彼の机の引き出しには、作業要領をまとめたノートが数冊束ねられていった。

(コイツはモノになる)
社長はそう思い、将来を嘱望した。

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