▲▲社のケース(8)vol.055

元来中立的だった管理部門内にも亀裂が生じたのは、システム会社の営業戦術である「第二創業期」というフレーズの連呼が浸透してきたころからだという。

新社長にとっては、社の内外から神輿を担がれて、血が騒いできたという側面もあったに違いない。

「もともと新社長は、兄貴分の古参社員たちは後進に道を譲ってもらい、次はより広い視野で顧客と仕入ベンダを開拓してもらいたいと考えています」

▲▲社の歴史そのものと言える古参社員の経歴を活かし、若手では到底及ばない新たな関係性を自社にもたらしてくれるはずだと、新社長は思っているらしい。

「だから、『目の上のタンコブ』だなんてとんでもない。処遇をアップさせて大きな仕事を任せたいと考えていたのですが、このままでは一体何人が残ってくれることか……」

あなたはギョッとした。
この男の今の言い方、まるで自分がその権限を持っているかのようだ。

(まさか、この男が新社長か?)
ホームページの顔写真は小さかったから、あなたは細部まで覚えていない。

(こんな顔だったか?)
しかし、「あなたが社長ですか?」とは今さら聞きづらい。

もともと、そんなことはどうでもよいという考えで、【法人】の手相鑑定などという茶番を進めてきたのだ。

あなたは思い直した。
(逆に、社長から相談を受けているのなら、本当に伝えたいことを、伝えたい相手にぶつけられて好都合だ)

《続く》

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