▲▲社のケース(8)vol.055

あなたが当初から気になっていたふたつの事柄。
【管理部門内にも世代間亀裂が波及】
【この問題の解決に基幹システムがどう絡むのか】
これらには、やはり直接的な関係があった。

「システム会社の営業担当者と技術担当者は、こちらの状況にとても理解を示してくれました。……まあ、売り込みに来ているわけですから当然と言えますが」
と【法人】は言い、その内情を詳しく語った。

通販事業が軌道に乗り出したころから、社内の売上計上処理が増加し、旧体制の複雑さの弊害が際立ってきた。

仕入ベンダから顧客へ納品完了した連絡があるまで売上を立てられない旧体制と、自社倉庫から出荷する時点で顧客に納品請求書を発送できる新体制が並立するようになったからだ。

旧売上計上

従来の売上計上

 
新売上計上

新体制の売上計上

 

業務量増大と事務の煩雑さに音を上げた経理部門の要請で▲▲社にやってきたシステム会社は、新旧双方のオペレーションに対応するために、まずはベースになるシステムを構築し、その後は新社長の方針に従い、旧体制を終息させるカスタマイズ提案をした。

ベースの設計から完成で8千万円、カスタマイズで2千万円、トータル1億円の見込みだった。

さすがに新社長もこの提案には乗り気ではなかった。
増収増益を力強く語ってはいるが、それだけのキャッシュが飛んで行ってしまうとなればこれは容易ではない。

倉庫の確保に多額の投資を予定している状況で、システム構築にそんな支出は現実的でないという判断だ。

「そんなわけで、いったんは断りました」
あなたはそれを聞いて力強くうなずいた。

(時期尚早だ)
システム導入の話が進み始めたのは、経理部門が騒ぎ出したことがきっかけというではないか。

つまりは予想外の変化に対応しようというドロナワ的事情だ。
今後のオペレーションの変化が読めない状況なのに、次の展開に合わせて開発しようとしている。

夢物語もいいところだ。

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