▲▲社のケース(7)vol.054

「新社長の狙いは、旧来色の払拭です」
【法人】はあなたにそう告げた。

さえぎって基幹システムのことを聞こうと思ったが、仮にも相手は相談に来た客だと思い、それはやめた。

それに、経営トップの知られざる情報を教えてくれるらしい。
あなたはもう少し黙っていることに決めた。

新社長は大学卒業後すぐに、父が経営する▲▲社に入社し、今日を迎えている。

父親をはじめ、多くの古参社員たちから様々な手ほどきを受けて成長し、骨の髄まで従来の社風が染みついているはずなのに、社内のどこにもなかった新体系のビジネスを着想し、通販事業という形にしおおせているところから察すると、いわゆる「ぬるま湯に浸ってしまう」タイプではないのだろう。

「新社長が目指すのはあくまでも新しい体制での事業展開で、古参社員の活躍をスポイルすることは考えていません」
【法人】はそういうが、あなたには信じられない。

すべての事業を通販と同じく新流通体制に一本化したら、古参社員は通販事業の一線ですでに活躍中の若手たちの後塵を拝することになる。

パソコンを使ったオペレーション重視になればなるほど、眼の壮健さや指先の動作など肉体的な若さがものをいう。

そんな条件下では、ベテランほどランクが下になってしまうことが想定される。

新体制の人数は不足しているそうだが、欲しいのは経験豊富で扱いづらい先輩ではなく、これから育てていく若者であると見るのが一般的な見解だ。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする