自分が【法人】だと名乗る男は、当然のようにあなたの前に現れた。
当然あなたは、彼の言うことなど信じてはいない。
会社が人間の姿をしているというのは、いくら何でも設定に無理がありすぎる。
この男はただの人間だ。何もかも普通に見える。
しかし、あなたに迷いはない。
この男が何者であろうが、相談者に対して手相鑑定を行うと決めている。
カウンセリングだろうが占いだろうが、はたまた霊視だろうがマッサージだろうが、手段はあなたに委ねられているのだ。結果を出せばよい。
短くあいさつして椅子を示し、テーブルをはさんであなたも腰を下ろした。
話し出そうとする相手を制し、あなたは両手を広げて目の前に置くよう、男に指示した。
男はちょっと戸惑ったように、自分の手のひらとあなたの顔を見比べ、そのままの姿勢でいる。
こんなところも、ごく普通の人間の反応だ。
あなたは、もう一度手のひらを見せるように言い、ゆっくりと下ろされた両手の上に、上半身を傾けてのぞき込んだ。