▲▲社のケース(1)vol.048

そんな事情で、発足当初と比べると業績アップのスピードは格段に早くなった。

価値観の転換に気づいて後追いする企業も増えたが、その中で▲▲社は先駆者の利益を十分に享受した。

少子化で学校が減り、学校向け販売のマーケットが狭まるほど、ブランド価値の高い▲▲社のシェアは相対的に広がった。

学校向けビジネスの結果で縁のできた子供たちが、大人になった時、別な形でまた▲▲社との関係を持つように仕向ける長いスパンの事業モデルも、その流れの中で自然に確立した。

未上場の会社だが、それだけに独特の古き良き時代の空気を残した優良企業だとあなたは思っていた。

最近、ホームページに簡易な財務諸表とそのコメントが掲載されるようになり、元経理マンでもあるあなたは当然それにも目を通していた。

長年かけて築いた仕入先との信頼関係により、官公庁指定の特定商品群の調達に強いことが書かれている。
おそらく、入札価格で他社の追随を許さないためと思われるが、回収リスクのない取引相手が多いのが特徴だ。

また、職場と家庭のバランスを大切にする自社コンセプトへの理解者が、極端に少ない厳しい時代を経ているだけに、シビアなコスト感覚もある。
財務体質の良さは、実直で手堅い経営ならではのものだろう。

それでも、景気が低迷し、世の中全般の福利厚生予算が減少した影響で、一時期は粗利が取れない厳しい時期が続いていたらしい。

だが、その打開策で手がけたネット通販により、ここ数年はまたもや業績が上向いている。

社食や売店を備える企業の多くは、各地に拠点を持っている。
社員向け通販は、新規顧客獲得のコストが無いため、利益が取れやすいことが大きな要因だった。

社食や売店そのものが閉鎖した企業も多かったが、それを補うインパクトを与え、今や通販事業は▲▲社の重要な柱になっている。

そして、その原動力になった2世の活躍によるものだろう。
最近、先代社長の息子が新社長に着任した。
今後の活躍が期待されているところだった。

《続く》

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