投稿者: 469buncho

  • 青森県株式会社のケース(15)vol.085

    あなたは一旦手相から意識を離して考えることにした。

    日々の業務が右往左往、業績も右往左往、そして社長も右往左往している心もとない状態の中で、これまで一人の離反者や脱落者が無く、採用した社員が全員残っている事実。

    仕事は大変だし、業績低迷でボーナスは減り、昇給は鈍化しているにもかかわらず、ロイヤリティに変化はないどころか、むしろ増大している気がする。

    ヒマなポジションの社員に対し、多忙な本部社員が変わらぬ親しみと温もりをもって「接し続けている」ことがそれを表していると思う。逆境になるほど結束が強まっているということだ。

    社員たちのそんな様子は、彼らのどんな小さなボヤキやつぶやきまでをも把握している【法人】が証言しているので間違いあるまい。

    (ただ、それだけのロイヤリティがあるなら、ひとりぐらい「なんとか会社の勢いを盛り返そう」と考える人材はいないものか)

    あなたは社員マスタのデータに加え、履歴書の記述まで読み込んでみたが、どうもバリバリのビジネスパーソンといったにおいが感じられる社員はいない。

    (おそらく、自分と一緒に働く人物像として、社長が無意識に選んだ結果がこうなのだろう)

    ガツガツと頑張って儲けるより、のんびりと良い思いができるに越したことはない。
    あくせくと成功を追いかけて全力でつかみとるより、もたらされた幸運を素直に享受できるのが、この社長のスタイルであり、懐の深さなのではないか。

  • 青森県株式会社のケース(14)vol.084

    (うーむ)
    別に、あなたの違和感を解消することが、必ずしも青森社の問題解決に役立つとは言えない。

    そんなことより、常識的に考えれば事業縮小という方向性が定まってきたのなら、撤退に関する具体的な方策の検討に取り掛かるのがセオリーのはずだ。

    あなたが考えるべき内容としては、そちらの方が正論だとは思う。

    しかし、【法人】の手相鑑定などというセオリー無視のスタイルを取ったあなたには、セオリーからでは得られない手段でのアプローチこそ重要ではないだろうか。

    (あ……)
    セオリー無視で思い出した。Unknownへのアプローチをすっかり忘れていた。
    あなたは【法人】に、手のひらを差し出すよう促した。

    aomori's hands

    個人 【法人】
    生命線 取引線(売上仕入線)
    運命線 取引先線
    知能線 製品線
    感情線 社員線
    太陽線 市場線
    結婚線 関係線

    (なぜ、こういうことになったのだろう)

    手相は変わっていくものだ。

    たとえ生まれつき不向きなことでも、日々それをしなければならない環境に身を置くと、能力の習得と共に手のひらの状況も変わる。

    どこまでが先天的で、どこからが後天的な変化を遂げたのかわかりづらいが、しばし見入ってしまうほど興味深かった。

    読み解いてストーリーを作るのに、どこから紐解こうかとワクワクする。

    (『社員』に重点を置くのがよかろう)
    しばらく眺めたうえで方針を立てた。

  • 岩手県株式会社のケース(15)vol.107

    (もう一手、打っておく必要がある)
    あなたの作戦が当たり、大手雑誌社に掲載されたとしよう。

    岩手社には問い合わせが殺到する。
    どの雑誌に載るかによっても反応は違うだろうが、あなたの演出が功を奏するほど、その度合いは著しい。

    メールでの問い合わせはともかく、電話の対応は厄介だ。
    ここがノープランでは岩手社の救済どころではなく、逆に潰してしまう恐れがある。

    まずは、受付用の電話回線を用意し、24時間録音対応の案内を流すことだ。

    「技術提供に関するお申し出をされる方につきましては、○○社(記事を掲載してくれた雑誌社)から、『生産規模』『技術水準』『これまでの実績』および『経営者の意気込みや今後の予測』について、雑誌掲載を前提とした取材・調査が入り、写真と共に開示される可能性がございます。マスメディアへの積極的な露出をご了承いただける方は、メッセージを残してください。
    では、発信音に続いて、お名前、住所、電話番号を ~ 」

    そして、雑誌掲載に合わせてホームページに記載する電話番号も変更し、受付ダイヤルだけを表示する。

    「雑誌『○○』への弊社の掲載記事でご覧いただいているかとは存じますが、誠に勝手ながら現在、業務多忙につき新規受注をお断りしております。既にお取引のある事業者様は、今までの電話番号にて受け付けておりますので引き続きお願い致します。
    技術提供の件が沈静化しましたら、従来の電話番号表示に切り替えさせていただきます。
    ご迷惑をおかけして大変申し訳ございませんが ~ 」

    これだけですべての冷やかしや便乗商法の類をシャットアウトできるとは思わないが、かなりの歯止めは期待できると思う。

    さらに、直接訪問してくる相手用にはり紙も用意する。

    “それを見たにもかかわらず突破してくるような相手はもはやビジネスの相手とは言えない。岩手社のことを思っての行為ではないと断言できる”

    そう思って差し支えないようなものを準備するのだ。

    それでも訪ねてきて、クドクドと物言う相手に対しては、オヤジさんの一喝に頼ることになるだろうが、これについては明らかに悪質と言い切れるので、きっと岩手社の中で対応策はとれるだろう。

    あなたはそこまでを伝えると、面談の終了を告げ、部屋を出た。

    《続く》

  • 岩手県株式会社のケース(14)vol.106

    どうしてそんな発想をしたかというと、あなたが公務員時代の記憶が頭をよぎったからだ。

    官公庁には時々、「こんな素晴らしい技術を開発した」といった連絡が入る。

    ディーゼル排気ガスの黒煙を出なくするフィルターとか、廃棄物を有機肥料化する媒体など、新たな発見を告げるものだ。

    たいていは小さな企業で、「それを使ったビジネスをしたいのだが」というニーズを抱えている。

    たとえその発明が科学的検証で効果有りとされ、商品化まではできても、会社自体のネームバリューが無いので、新発明などは効果を強調すればするほど胡散臭さが先に立つ。

    よほど直販向けの上手いやり方を知ってでもいないかぎり、テレビCMなどマスメディアの広告宣伝をばかりを思いつき、結局資金が無いのでそれはできずに呻吟する。

    だから、お役所をなんとかうまく利用できないかと相談に来たりするのだ。

    今回の岩手社のケースでは、ビジネスを拡張ではなく、むしろ切り捨てるための宣伝展開をしたい。

     

    技術を譲り受けることに、垂涎ものの魅力を感じる演出が欲しい。
    譲り受けたニュースに宣伝効果が期待でき、その技術自体にも十分な利益が望める、という旨みを強調したい。

    だから宣伝展開は信用ある媒体を使い、それも大規模であることが望ましい。

    岩手社の乏しいネームバリューで、ホームページ作成をどれだけ頑張っても効果はない。
    舞台を一段と豪華にするためには、大手ビジネス誌が良いと考えたのだ。

    『スタビライザー』は、存在すら知られていない新発見とは違う。
    話題急上昇の『ビールの指輪』の心臓部を担う技術であり、それは何社もの企業が開発を断ったほどの高いレベルのものだ。

    岩手社は無名だとしても、大手ビジネス誌で記事が読まれれば、無名のデメリットは一掃される。

    大ヒットの裏側に、下町の工場の高い技術が隠れていることが興味深く、さらにそこには強烈な需要が存在し、儲けの匂いがプンプンしていると告げているのだ。

    記事として取り上げる雑誌社、技術を欲しがる企業、双方が「おいしい」と感じるとあなたは思っている。

    《続く》

  • 岩手県株式会社のケース(13)vol.105

    (ところで、本当に岩手社の周囲は『平屋だらけ』か?)
    工場のロケーションを完全にイメージだけで書ききってしまった。

    フィクションならそれでよいが、実際に取材を受けることを考えると、事実とあまりにもかけ離れていては問題がある。

    まるで、岩手社のオヤジさんが雑誌社の気を引くためだけに、虚言を弄した印象を与えかねない。

    あなたは念のためGooleMapを起動させて付近の画像を確かめた。

    あなたのベタな想像では、岩手社の工場は細い道を1本はさみ、堤防に張られたフェンス越しに川が見えることになっていたが、よく見ると川からは結構な距離があった。

    しかし、それほど高い建物が無い地区なのはたしかで、平屋が多いという表現はギリギリセーフだと思う。
    オヤジさんの年齢がそこそこ高いので、彼が子供の頃に見ていた風景ということまで考えれば、ほぼ真実と言って差し支えないだろう。

    検証は終わった。

    (よし、これでいこう)
    この場合、文章を紙に印刷したり、USBに記録したりする必要はない。

    【法人】とパソコンはリンクしている。
    入力しただけで、一言一句が【法人】の記憶には残る(はずだ)。

    文章中の固有名詞は、実際に雑誌社へ向けた文章を(【法人】の誘導で)作る誰かが適宜変えるとして、とにかくビジネス誌への呼びかけを実行させる。

  • 岩手県株式会社のケース(12)vol.104

    あなたが一気呵成に書き上げたのは、取材要請の文章だ。
    それはこんな内容だ。

     

    緊急事態発生!

    どうか御社の記事で、ヒット企画を支える小さな町工場を救って下さい!

    突然のファックス申し訳ありません。
    弊社は○○区の岩手県株式会社と申します。
    社長と二人の息子、そして女子事務員ひとりの小さな所帯で、機械部品を作っている創立34年の下町の工場です。
    名も無い会社ではありますが、今話題になっているビアガーデン『ビールの指輪』の大ヒットにより、大変困ったことになっています。

    私どもでは、独自開発に成功した「スタビライザー」と呼ぶ小さな機械を指輪に埋め込むことに成功し、『予約が取れないビアガーデン』の盛況に一役買わせていただいております。

    実はビア社さんからこのお話をいただいたときは、正直こんな大仕事になるとは予想もできず、オヤジひとりでコツコツと仕上げて参りましたが、今では月間の注文数が当初予測の60倍にまで膨れ上がり、もはや私どもだけでは365日寝ずに働いても生産が追いつかなくなりました。

    しかし事業はまだ緒についたばかり。今のところは首都圏に2店舗きりですが、CMでも流れているように、今後は全国展開に向けて事業は極めて順調です。ビア社さんからは、さらにこれまで以上の注文数が見込まれるとお聞きしています。
    ただし、私どもは技術はあっても量産ができず、このままではビア社さんをはじめ、指輪を待つ入会希望の方々にも大変なご迷惑をおかけしてしまうと思い、気が気ではありません。

    つきましては、ビジネス雑誌界をリードする御社の伝播力・影響力におすがりする次第です。
    どうか、私どもと技術を共有し、ともに指輪機能の心臓部を担ってくださる製造会社との出会いを、御社の記事で取り持ってはいただけないでしょうか。

    まことに図々しいお願いではございますが、さきにも申しましたとおり、私どもは無名の町工場ゆえ、ホームページに掲載しても手を上げてくださる企業は現在のところ、まだ一社も見つかっていません。
    生まれ育った地元の土と空気を糧に、一つひとつ大切に組み上げてきた成果ですので、できることなら国内の企業で純国産のエレクトロニクス技術として取り扱っていただきたいのですが、このままでは埒が明かないと、最近は海外への譲渡も視野に入れ、近隣に工場を構える中国・韓国系技術者の伝手に頼ったりもするようになりました。

    しかし、日本の下町発祥の技術として、やはり真に実力を持った日本企業に譲り渡したい。
    国際化が進む中、何とも料簡のせまい考え方でしょうが、近所でも頑固おやじで通った職人の、最後のわがままを聞いてもらいたい。鼻たれ小僧だった昔と変わらない平屋だらけのこの町で、立ち並ぶ屋根の向こう端にグラングランと沈む夕日を見ながら思うのは、どうにもこの国が好きでたまらない単細胞な自分の姿です。

    どんな小さな記事でも結構です。掲載を快諾してくださる雑誌社様からのご返事を、首を長くして待っております。よろしくお願い致します。

    これを、大手ビジネス誌と言われる数社に向けて、ファックスで発信する。

    《続く》