投稿者: 469buncho

  • 岩手県株式会社のケース(11)vol.103

    あなたの考えは行き詰った。

    技術を売る。
    いや、事態の解決にかかる速度と引き換えに無料にしても良いと思う。

    オヤジさんの意思は多分そこにある。
    ただし、その相手は厳しく吟味したい。

    ホームページを作って呼びかけても、その要求を満たすような作り方は望めない。

    (いったい、どうする)

    (ビジネス発想で行き詰ったら手相)
    あなたはもう一度、【法人】の手のひらを見た。

    右手生命線(売上線)から中指の付け根まで一直線に伸びる運命線(取引先線=得意先線)と、左手首中央付近から、これも一直線で中指へ向かって昇る取引先線(左手なので仕入先線)が、特に目を引く。

    独力・独断で切り拓く仕入先との関係性に対し、得意先との関係は「売上そのものが作る」という特徴がよく表れている。

    製品の信頼性は、オヤジさんが自分のつくるモノへの想いを反映した結果ということに、あなたは思い至った。

    初見ではそれほど強く気に留めなかったが、親指下の金星丘がよく発達しているのだ。
    会社への愛、社員への愛、そして取り扱う製品への愛という、経営者の価値観が表れている。

  • 岩手県株式会社のケース(10)vol.102

    『技術を、相手かまわず、見境なくばらまく』
    これは、岩手社のオヤジさんの仕事観に反する行為なだけでなく、効果が表れるまでの速度や確実性も信頼できない。

    どこの誰だかわからない人間が、勝手な思惑や不確かな技術で、ちぐはぐな時期に行動されては、彼らがビジネスを仕掛ける相手であるビア社ではかえって疑心暗鬼になり、今より一層岩手社をアテにするようになりかねない。

    そもそも、独断で技術を公開したことで抗議してくるだろう。

    権利は岩手社にあるとはいえ、事業への妨害行為として損害を主張されでもしたら、とてつもなく厄介なことになる。

    窮状を訴えても助け舟を出すどころか、要求を強めてくるような忌々しい相手だが、下手な刺激は避け、むしろ相手の利にも配慮する必要がある。

    だから、急を要する岩手社の救済法はもっと主体的に行われるようにしたい。

    ホームページの読み手の反応を知り、実際の行動に移すほどに前向きな相手には、適時に必要な情報を提供していけるようにする。

    そのためには、技術のすべてをサイトに掲載するのではなく、どのくらいの熱意と技術力を持つ相手かの見極めが為されるような仕掛けをしておきたい。

    (実際、冷やかしで連絡してくるような、いかがわしい業者も多いことだろう)
    無名の悲しさである。

  • 岩手県株式会社のケース(9)vol.101

    (それならいっそ、無料公開はどうか?)
    岩手社から技術供与を受けた企業が、量産体制の構築に成功するかどうかは一種の賭けだ。

    だから、「有料買取り」に慎重になるせいで動きが鈍重になるというなら、プログラムのオープンソースよろしく誰でも閲覧可能にして、スタビライザーと同等の技術を擁した企業の参入を待つという方法だ。

    ある種、捨て身の発想である。

    欲に目がくらんでしまっているビア社とアミ社は、どうもその点を全く顧慮していないようだが、岩手社のオヤジさんが開発した「スタビライザー」と内輪で呼んでいる技術は非常に価値の高いもののはずだ。

    ビール供給機の製造会社がビア社に出した見積金額がいくらかはわからないが、発注を諦めたほどの価格がつく技術ということだ。

    それを指輪サイズで実現させたことと、事業開始後に指輪側のトラブルが一件も起きていない事実が示す「安定性の高さ」までを考慮すると、岩手社がこの技術に対して提示しても良い金額は、それとはけた違いに高額だといって差し支えないと思う。

    (それほどのものを、無料公開か……)
    あまりにももったいない話だ。

    本来、『ビールの指輪』の事業などには釣り合わないほどの高度技術なはずで、現在ビア社に機械部品として納めている金額ではバカバカしいもいいところだ。

  • 岩手県株式会社のケース(8)vol.100

    (スタビライザーの技術を、どうにか譲渡できないか)
    機能を模倣、かつ量産できる会社が、さらに安価でビア社に供給を申し出れば、岩手社はこの仕事から足を洗える。

    それには技術を売ることができればよいわけだが、買い手がつくかという問題がある。
    それはさっきから堂々巡りしていることだが、【法人】はさらにこんな裏話をあなたに披露した。

    ビア社はビール供給機の開発会社に依頼できなかった機能を、予算内でやってくれそうな企業を探し回った。
    岩手社に話が持ち込まれる前のことだ。

    親会社であるアミ社の後押しが得られたのでかなり手広く調べ、いくつかの心当たりを見つけることができた。

    しかし、いざ交渉に入った段階で、別の問題が持ち上がった。
    ビール供給機の機体の金属が、指輪との通信を妨害していることが発覚したのだ。

    1回から数回の送受信では影響を受けないが、数回の送受信では混線による誤作動が心配される。

    現在のスタビライザーが1秒間に128回もの送受信を行うことで通信完了としているのは、供給機の素材を手に取ってみた岩手社のオヤジさんが、それだけの交信を要すると判断したためだ。

    本来は、事前にそこまでの配慮が必要な問題だったのだ。

    しかし、供給機の機体を別の素材に変更させる商談は失敗した。
    予算の点で話にならないからだ。

  • 青森県株式会社のケース(13)vol.083

    (むしろ、問題は「撤退時のオペレーション」か)
    借りている事業所用不動産からの退去に伴う手続きは当然だが、他にも問題がある。

    たとえば、現在各拠点で手掛けている仕事を停止させ、本社業務に集約しなければならない。
    混乱する現場の収拾が必要だ。

    地方拠点業務の停止と本社集約。
    これは、口で言うのは簡単だが、実際に動く人間からすれば、簡単に口で言ってくれるなと反論したくなるほど面倒が多いことだ。

    それから当然、その拠点で働く社員をどうするか、だ。
    本社から転勤させた社員は戻ってくる公算が高いが、現地で雇った社員は退職してしまうかもしれない。

    「こう言ってはなんですが、二つの営業所は『営業所』というより『出張所』でしてね。社員同士の会話でも、まあ、のんびりしたもんです」
    【法人】はそう話す。

    (ということは)
    あなたは2拠点の各種伝票データを見た。

    起票者の欄を確認すると、すべて本社の事務員が行っている。

    売上の伸長が止まってからは、現地の事務が減少しており、本社集中制度をもくろんだ社長が意識的に地方拠点の担当事務を本社へ引き上げている。

    それぞれ1名ずつ置いている2拠点の事務員も、本社へ異動させようとしているところだった。

    社員をドライに切り捨てることを考えていないという点で、青森社社長は、あなたが想像した人物像から外れてはいないようだ。

    そんな社長の「人を受け入れる性格」が社内に行き届いているせいなのか、忙しい本社と対照的な地方拠点の社員を見下すような風潮は、【法人】の話からは感じ取れなかった。

  • 青森県株式会社のケース(12)vol.082

    (成長期なら、それもいいだろう)
    成長期は、顧客の数が増える時期だ。

    客は、その商品やサービスが欲しいので、買うこと自体はほぼ決定している。
    あとは、どこから買うかという選択だけが残された状態にある。

    だから成長期は「今売れている商品を売ればよい時期」であり、「顕在顧客に最もスピーディーに到達する競争の時期」とも言い換えられる。
    同じ業態で株式公開している企業が無いなら、上場することもまた有利な条件を持つ要因になることだろう。

    (しかし、残念ながら今は成熟期だ)
    成熟期に上場するということがどんなことか、青森社の社長には念頭にないと思うし、システム会社の営業がそこまで懇切丁寧に話すだろうか。

    「今売れている商品を売ればよい成長期」とは違い、成熟期は「次のヒット商品を出さなければいけない時期」だ。
    売上や利益が上昇しなければ投資家に対するアピールが弱くなり、株の売買では売りが先行して株価は下落するというリスクがある。

    その防止策についての助言をしているかどうかということだ。