投稿者: 469buncho

  • 宮城県株式会社のケース(7)vol.118

    とにかく今の話から推測すると「市場における自社戦力」とは『社員』ということになる。

    「人は石垣、人は城」は戦国武将の武田信玄の有名な言葉だ。
    「資本は人なり」は出光興産の創始者である出光佐三の方針である。

    (臆面もなくそんな理想を掲げているのだろうか)
    一瞬あなたはそう思った。
    そういう綺麗ごとは、どの経営者も口にする。

    しかし、現実には言葉とは逆になることがいかに多いことか。

    たとえ経営トップが末端の社員ひとり一人に対し温情主義で臨んだとしても、間に挟まる幹部の質が悪いと結果は惨憺たるものになる。

    せっかくの善政が捻じ曲げられて、社長の声が末端に届いたときには搾取同然の圧力に姿を変えてしまうからだ。

    さっき【法人】が話したように、社員たちが圧迫や強制に怯え、あるいは怒りを感じているなら、末端の現実を知らぬ社長がいくら慈悲の言葉を並べても、社員はしらけるだけである。

    当然生産性は落ちるし、ちょっとでも良い条件の職場を見つければ、迷うことなくそちらへ移ってしまうことだろう。

    『労働力の搾取防止』『業界標準の1.3倍の給与』などという綺麗ごとを並べたところで、言葉どおりに社員が報われているはずだなどと、安易に信用はできない。どうせこれも茶番じゃないのか?

  • 宮城県株式会社のケース(6)vol.117

    「社長は、市場の転換と拡大を手掛けたのですが、その時最も重視したのは『市場における自社戦力の留保』でした」

    (?)
    言っている言葉は理解できるが、言っている意味が理解できない。

    あなたの目が点になっていることや、その理由は関心の外らしく、【法人】はそのまま言葉をつなごうとしている。

    (どうしようかな)

    【①:話を続けさせ、後で話の腰を折る】か、【②:最初に話をストップさせてから、ノンストップで話させる】か?

    対話コミュニケーションにおいて、この選択肢が重要になることがある。

    何となく①は「わからないなら最初に質問しろ」と怒られそうな気もするが、必ずしもそうではないとあなたは考えている。

    話の途中で腰を折られたことがきっかけで、仲間内では説明不要と決め込んでいる事柄が、実は顧客への説得力に欠けるものだと気づく等、甘かった点が浮き彫りになることがある。
    そんなときは②より①のほうが効果的だ。

    あなたは、【①:話を続けさせ、後で話の腰を折る】を選択した。
    この後何を言おうとしているのかがまったく不明瞭なまま、あえてしゃべらせてみた。

    相談業としては、ある意味冒険的な態度だ。

  • 宮城県株式会社のケース(5)vol.116

    大きすぎる悪は、悪ではない、という言葉がある。人の持ち物を奪えば罪を問われるが、国を奪えば英雄とか君主と呼ばれる。

    つまり、頂点まで行きついてしまうと、やることなすこと常識の物差しでは測れないようになってくる。

    当初は、会社を買い取った本人が経営者になって乗り込んでくる、というので社員たちは緊張した。

    側近を引き連れてやってきた新経営者が社内を蹂躙し、取り巻きだけがいい思いをし、既存社員は搾取されるだけになるかと警戒したが、そんなことは一切なかった。

    新社長は小さな私利私欲とは無縁だった。

    小金を手元に残すためのグレーな節税などには一切手を染めず、側近をつなぎとめるためだけのような、いやらしい便宜の図り方も全く行わない。

    経費の支出についてもクリーンを貫き、例を挙げれば、たまたま出張先と同じ都市で開催される財界のパーティーへ夫人を伴って参加する場合など、夫人の交通費や宿泊代を会社の経費では落とさせなかった。

     

    宮城社は未上場だから、社長の経費使用の自由度はかなり高かったのだが、そういった点は清廉を極めた。
    投資家から見て信用のおけない経営者像に自分を重ねることを、よしとしなかったのだろう。

    そして、投資家から見て能力のない経営者像に自分が重なってしまうこともまた、彼の望まぬことだった。

    利益確保は絶対のものであり、至上課題だった。
    しかも、長期的視点がそこに加わる。彼はデイトレーダーではなく、数代続く投資家家系の人間であるため、企業価値を長い目で見て判断することは、呼吸するのと同じように自然なことだったのだ。

    (これもまた、面白い要素だ)
    あなたは興味をひかれた。

     

    経営学の教科書的な、極めて優等生的な、まるでMBAの講義の中でしかありえないような企業の姿が展開されるのだろうか。

    「新社長は、継続的に高い投資効率を上げ得る安定的体制を築くため、いくつかの要素を加えました」

    (まさか、この会社もシステム会社の攻勢を受けたか?)
    あなたは一瞬そう思ったが、『高い投資効率』ということばに多少の違和感をおぼえた。

    優等生企業になりたいなら現在価値の高いビジネスへの着手という観点から、普通は収益と費用の構造を考え、高い粗利を取れる製品の確保や、薄利多売で徹底した高ノルマ/低コストを画策する方向へ進むはずだ。

    その実現に向け基幹システムの導入(又は入れ替え)が行われたのかと反射的に考えたが、それとは尺度が違うように感じられた。

    《続く》

  • 宮城県株式会社のケース(4)vol.115

    結局、いつもそうであるように、あなたは相手の問題よりも相手自身のことを知ろうと試みた。
    あなたの問いを受けて、【法人】は語り始めた。

    宮城県株式会社は、フィルターと送風機の製造及び販売を行う中小企業だ。

    元々は空調機械用部品のメーカーで、特にフィルターと取付のジョイント部品を専門に扱っていた。

    いくつかのメーカーに部品を卸していたが、ある大企業が宮城社の買収を画策している噂が流れ、業界に波紋が広がった。宮城社がどこか1社の傘下に入られると困るメーカーが複数あり、それらの主要株主である一人の投資家が、先手を打って宮城社を買い取った。

    (なるほど)
    少し興味深い話で、このまま空調機業界の裏側の話を聞いてみたい気もするが、今は鑑定を全うすることに集中しなければならない。

    宮城社を買い取った投資家は、社長を続投させたのか、別の経営者を送り込んだのか?

    それと、当然ながら会社に大きなストレスが発生しているから、社員たちが受けた衝撃も大きかったに違いない。不倫との因果関係も疑われるところだ。

  • 宮城県株式会社のケース(3)vol.114

    (やはりここは王道をとって、人事データを見てみるべきだろうか)
    【法人】に社員マスタを表示させ、不倫フラグ(!)に「1」を立てた社員だけを抽出した。

    不倫の相手が社内に存在する同士で並べてみると、男性が年上のカップルがほとんどだが、女性が年上という組み合わせもある。

    男性が年上の場合、ふたりの年の差は大きいのに比べて、女性が年上の場合は年齢差がさほどない点があなたの目を引いた。

    (こういう関係の場合、年下女性は相手の男性に「父性」を求め、年下男性は相手の女性に対し、「姉性(?)」を求める傾向があるのだろうか)

    しかし、女性側から「父性」を求めるほどの年上男性が、その付き合いが深まるにつれ「未成熟さ」が顕著になるケースも多く見られ、予備情報なしで女性のほうの話を聞いていると、彼女の不倫相手は同年代のいかにも頼りなげな男性像として思い浮かんでくる。

    そんな場合、しばらく話を聞いた後に相手男性の年齢を聞いて驚くこともあるが、彼女たちの多くはなぜか、相談に来たにもかかわらず、当初は相手男性の年齢を明かしたがらない傾向があり、どこかで心理的なブロックが働いていることがうかがえる。

    あるいは、相手男性から父性を感じる一方、逆に自らの母性を相手に当て込んで、まるで我が子を守るかのような態度に出てしまうのかもしれず、だとすればこれは共依存の一種かもしれない。

  • 宮城県株式会社のケース(2)vol.113

    行く手を阻む様々な問題を乗り越えた先の未来を信じ、今の「不快」をすべて「快」に変換し続けられるのが『夢』だとする。

    一方、行く手を阻む重苦しく具体的な問題を棚上げし、目をそらすために未来を妄想し、つかの間の「快」を繰り返しているだけなのが『自己満足』と言えるだろう。

    単なる自己満足を、夢へと成長させることで、行き詰っていた道が開けてくることはある。
    ただし、何でもかんでも夢に変えてもよいのか、ということだ。

    不倫が「単なる自己満足の2人前」にとどまっているからこそ、周囲を巻き込んでの大騒動を引き起こさずに済んでいるという現実もある。

    ある意味、当事者たちの倫理により、単なる自己満足的な不倫に抑えているという側面もあるだろう。

    これを夢に変えようと勇んでしまったら、どちらかの、あるいは双方の家庭を破壊し、家族親族との決裂が起こるだろう。

    他に、仕事面では左遷・離職、地域社会ではウワサ話と白眼視などといった「行く手を阻む様々な問題」が発生することも想像に難くない。

    どんな逆風のさなかにあっても、それを乗り越えた先の未来を信じ、今の「不快」をすべて「快」に変換し続けられる覚悟はあるか?

    結局、『夢』とは『覚悟』であり、『自己満足』とは次元が違うのだ。

    目の前にいるのは【法人】だが、ついあなたはそんな感慨にふけった。

    《続く》