宮城県株式会社のケース(16)vol.127

かつての社長の復帰。

これが、あなたが出した結論だ。
今の社長には、会長に退いてもらう。
代表権は持たせたままでよい。そうでないと、資金面などで現在のような注力は難しいかもしれないからだ。

現社長には、宮城社を使って成し遂げたい野望があるようだが、しかしこの不倫の蔓延について、やはり言い知れぬ不気味さと、関係者に露呈したときの恐ろしさを感じていたらしい。

社内で部下に対し、その不安を口に出して言った事実はただの一度もなかったが、たった一度、机上のパソコンで検索サイトに『社員の不倫 法的リスク』と入力し、表示されたリストを見る間もないほど即座にブラウザを閉じた履歴があることを、あなたは【法人】の話で知った。

おそらく弁護士のところにでも行って相談したのだろう。
が、その後も会社の中では弁護士との会話などはしておらず、側近たちにも一切話題を切り出さなかった。

これらのことから、社内不倫のことを知った後も、それに関する言動や行動を慎んでいたことがうかがえる。
トップの自分が部下たちにあたふたした自分の姿を見せたくなかったのではないかと思う。

それなのに、魔がさしたように自席のパソコンでキーワード検索をしてしまい、すぐに我に返ったのだろう。
社員たちに余計な動揺を与えないよう自分を律していても、やはり、かなり切羽詰まった気持ちだったに違いない。

(どこかに、この事態を収めてくれる人物がいないだろうか)
そう思っていたこともうかがえる。

不倫している社員の人事記録を引っ張り出し、長い時間凝視した後、ため息をついてそのまま棚に戻したことも、何度かあった。
初めての経営者体験の中、これまで感じたことのある孤独感とは明らかに別種の、経営者ならではの辛さを実感したのかもしれない。

企業情報なら過去から未来までを読み通せる投資家社長も、なぜこんなにも社員たちの間で不倫が蔓延し始めたのかという謎は、解明できなかったようだ。

《続く》

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