宮城県株式会社のケース(1)vol.112

何か複雑な気持ちだ。
あなたは顔にこそ出さなかったが、この後の面談はどういう展開を見せるだろうかと戸惑った。

まさか【法人】から不倫の相談を受けることがあるとは、思いもよらなかった。

まあ、【法人】という存在からの相談自体が、しばらく前までのあなたには思いもよらないものだったが・・。

(これも『口コミ』のせいか)
北海道株式会社の面談後、にわかに広まったと思われる【法人】間でのあなたに関する口コミ。
どんな点が、どんな具合に好評だったのか、それはあなたに口コミのことを教えてくれたハローワークの担当官も知り得ないことだ。当然、あなたにもわからない。

自分が【法人】の目にどう映り、何を期待されているかわからないまま接すると、ついつい自意識過剰になる。
試みに、目の前にいる「宮城県株式会社」に尋ねてみた。【法人】間でのあなたの口コミについて。

「他の【法人】の考えをここで話すことはできません」
宮城社は怪訝な顔で答えた。
これ以上の質問は、あなたにとってもよくないことになりそうだ。
事業に関すること以外で、下手に【法人】の事情に踏み込むことはタブーなのだろう。
深掘りすると、それこそ契約終了になってしまう恐れがある。
今、この仕事を失ったら、あなたは小金を持った程度の失業者に逆戻りだ。

(ひょっとすると、以前にもこういった「深掘り」をして解任になった担当者もいたのではないか・・)
あなたは、これ以上この話題に触れることを避けた。

【法人】は事情を語り始めた。
もちろん、【法人】が不倫をしているわけではない。社内で明確な不倫が4例、雲行きが怪しいのが6例もあるという。
うち、社員同士の不倫は2例、怪しい6例のうち社員同士は5例ということだ。
(ヒマなのか?)
反射的にそう思ったが、無論口には出さなかった。
社員94名のうち、17名が不倫中、またはその予備軍ということになる。
(結構なパーセンテージだ)
約18%にのぼる。

(しかし、この場合『倫理』が問題なのだろうか)
あなたに相談しているのは個人ではなく【法人】だ。

“恋愛”すると生産性は下がるのか?
そうは言いきれないだろう。気持ちにハリができて、人生全般に前向きで積極的になり、仕事への意欲が増すというのは、不倫でない恋愛においても普通にあることだ。
社内に想う相手がいて、その助けになりたいと願う状況なら、より一層仕事にも熱が入る。そこから生まれる業務アイデアが生産性の向上に役立つこともあるに違いない。

これまであなたのもとに相談に訪れた【法人】は、いずれも業績の伸び悩みか、失速して落ちかけていく状態からの救いを求めてきた。
ということは、現時点で不倫問題が業績に影を落としているか、いずれそうなるという明らかな事象が確認されているかのどちらかだと思う。

(そう考えて間違いないだろう)
あなたなりの関わり方が、何となく理解できた。
不倫が業績に影響するかどうかはともかく、「不倫問題」となれば確実に業績に悪影響を与える。
家族にばれるか、世間(客)にばれるか、いずれかの状態になれば、ダメージは深刻だ。

意外に、社内にばれてもダメージは深刻でないことが多い。
だが、もちろんモラルは下がる。
社員が抱いている会社への信用が失われていくなどの影響を考えれば、表向き穏やかに済ませていても病巣は深く複雑になっていく。
いっそ、早い段階で怪我による大出血(不倫問題)が起き、わかりやすい粛清で気が引き締まったほうが、重症化しなくて済むのではないか。

(この【法人】は『怪我』か『病気』か?)
あなたは、少しペースがつかめてきた。
【法人】とは、こういうものなのだろう。
地球環境問題とは、地球の体内環境である。
職場環境も、地球環境問題のひとつであり、それは【法人】の体内環境のことだ。
そこには、業績だけでなく社員の価値観や感情、その延長で社員の家庭までを含んでいる。
(【法人】が不倫の相談に来ることだって、当然あり得るのだ)

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