宮城県株式会社のケース(1)vol.112

何か複雑な気持ちだ。
あなたは顔にこそ出さなかったが、この後の面談はどういう展開を見せるだろうかと戸惑った。

まさか【法人】から不倫の相談を受けることがあるとは、思いもよらなかった。

まあ、【法人】という存在からの相談自体が、しばらく前までのあなたには思いもよらないものだったが……。

(これも『口コミ』のせいか)
北海道株式会社の面談後、にわかに広まったと思われる【法人】間でのあなたに関する口コミ。

どんな点が、どんな具合に好評だったのか、それはあなたに口コミのことを教えてくれたハローワークの担当官も知り得ないことだ。

当然、あなたにもわからない。

自分が【法人】の目にどう映り、何を期待されているかわからないまま接すると、ついつい自意識過剰になる。

試みに、目の前にいる「宮城県株式会社」に尋ねてみた。
【法人】間でのあなたの口コミについて。

「他の【法人】の考えをここで話すことはできません」
宮城社は怪訝な顔で答えた。

これ以上の質問は、あなたにとってもよくないことになりそうだ。
事業に関すること以外で、下手に【法人】の事情に踏み込むことはタブーなのだろう。

深掘りすると、それこそ契約終了になってしまう恐れがある。
今、この仕事を失ったら、あなたは小金を持った程度の失業者に逆戻りだ。

(ひょっとすると、以前にもこういった「深掘り」をして解任になった担当者もいたのではないか……)
あなたは、これ以上この話題に触れることを避けた。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする