「もしも実際の受取額が多額になる場合でも、あくまでも表向きの収入はハローワークからの支払金額で、それをもとに税金は計算されます。ですから税金対策目的で事業者登録などをする必要はありません」
(しかしそれでは脱税・・イヤ、合法的な税免除ということか? イヤイヤ、これは『合法』という言葉の範疇には入るまい)
混乱するあなたに、彼女は続けた。
「逆に、事業者登録などをして社会的に目立ってしまうと、事業収入の割に生活が派手だとかいうことで、何かしらの影響が出てしまうかもしれません」
ピンとくるものがあった。
(【法人】の存在がバレそうになって、契約終了になった前任者もいたということではないか?)
気を引き締め、細心の注意を払わねばならないということか。 お金は必要だが、この仕事を続ける限り、たくさんあればよいという単純な図式では済まされそうにない。
あればあっただけ、うまく管理しなければ、色々と厄介なことが起きそうだ。
しかし、わずか1か月程度の間に、かつての年収の何倍もの金額を手にしたあなたは、正直言って管理どころか押し寄せる札束に巻き込まれて溺れかねない心境だ。
派手な生活に一変することの危うさだけは、担当官の言葉から十分に読み取れた。 だが、具体的にどうすればよいのかは全くイメージが湧いてこない。
現在は質素、というより求職にあえいでいた頃の『貧』な暮らしだ。
(こういうスタイルのままでいればよいということか・・)
しかし、貧しさと質素は全く違う気がする。
【法人】鑑定については大胆な見切りと迅速な決断をするあなただが、自分自身の生活についてはまだまだ夜明け前にもならぬ暁闇の中をさまよっている……。