岩手県株式会社のケース(2)vol.094

スタビライザー。
【法人】は何度もこの単語を口にしたが、正直なところあなたには正確に伝わらなかった。

スタビライザー = 姿勢制御装置?

そんなことを何となく思い浮かべるだけで、技術的なことには深入りしないつもりだった。

ビアガーデンで、ビールの注文をランダムモードにした客が、調子に乗ってオーバーアクションした時、供給機と指輪で交信する技術をそう呼んでいるのだろう。

たしかに、いい気分でポージングしているときに、やたらとエラーが起きて機械が作動しなかったら白けてしまう。

ビールの注文は指輪をはめた客しかできないなど、客に面倒をかけるリスクを採れたのは、順調な機械動作の裏付けがあればこそだ。

好評とクレームは皮一枚の表裏だったが、場末の町工場にひっそりと息づいている名工の技術が、継続的な好評を勝ち取っていた。

ビアガーデンの運営会社(以後『ビア社』)にとって、それは想像を超える嬉しい誤算だった。

本来、規模は小さくとも企画を成功させた実績さえあれば親会社への顔が立つところだが、ブームにまで成長した。

その立役者は、コンセプトのタイトル(店名も『ビールの指輪』である)そのままに“指輪”であり、そのクオリティを支える岩手県株式会社の技術は、その心臓部だった。

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