しかし、あなたがしているのは社長のカウンセリングではなく、【法人】の手相鑑定だ。
あなたは改めて男に手のひらを広げさせてのぞき込んだ。
すべての糸口はここにあるというのが、あなたなりの決め事だ。
個人 | 【法人】 | ||
① | 生命線 | ⇒ | 取引線(売上仕入線) |
② | 知能線 | ⇒ | 製品線 |
③ | 感情線 | ⇒ | 社員線 |
④ | 太陽線 | ⇒ | 市場(マーケット)線 |
⑤ | 結婚線 | ⇒ | 関係線 |
⑤ | 影響線 | ⇒ | ??? |
(長く寄り添う影響線)
売上仕入線(右手と左手の生命線)の内側に、細く長い線が、補強するかのように寄り添っている。
二重生命線なら活力そのものを表すが、影響線の場合は文字通り「影響者」の存在を意味する。
もちろん、個人を占う場合なので、これも【法人】に合わせて適宜変換が必要だ。
(影響線がいったん途切れるのは、最初の社長の時代と、現在を表すものだろうか)
最初の社長とは、現社長を北海道社に引き取ってくれた恩人のことだ。
彼が事故で亡くなった後、一時的に社長を務めた妻は、子供ができなかったこともあり、会社創業以来ずっと二人三脚で夫を支えてきた。
入社当時18歳の少年だった現社長を、弟のように可愛がってくれた先輩たちを生んだ土壌は、もちろん社長の人柄にもよるが、社員たちに手料理をふるまったり、服のボタンの繕いまでする母のような存在だった彼女の影響が大きかったようだ。
(現社長が切りまわしてきたこの10年間に、似たような存在はいただろうか)
現役の社員で最も長くいるのは、5年前に入社した事務の女性だ。
彼女に絞ってテキストマイニングで傾向を知ろうと思い、あなたは男にそれを要求したが、断られた。
「残念ですが、【法人】の活動エネルギーにも限界があります。会社の記録情報なら負担が少ないので大量に処理しても問題ありませんが、社内の会話情報抽出は先ほどのものだけにしてください」
仕方がない。
すべてが手探りの中、【法人】相手のルールは体験から学ぶしかない。
テキストマイニングは確かに便利だが、それだけに使いどころを誤ってはいけないということか。