北海道株式会社のケース(1)vol.059

商社をクビになった後、まだ18歳の彼は職探しに難渋した。
雑用ばかりで担当業務すら持たなかった彼は、3年の経歴がある割には、就職活動でのアピールが弱かった。

自分一人が生きていくためだけなら何をやっても暮らしていける。
しかし彼には育ち盛りの兄弟がいた。
だから、それなりの収入は欲しかったが、無理をして身体を壊せば元も子も失う。

母からの懇願もあり、仕事は慎重に選ばざるを得なかった。
そんな中、父の容態はさらに悪化した。看病のため母の稼ぎが減り、家計は一層苦しくなった。

途方に暮れているそんなころ、父の友人から声をかけられた。
若いころ勇ましい神輿担ぎだった父とは、「祭り仲間」の親友だった。
イベント会社を経営していたその男は、扶養家族を抱えて生活に困っていた彼を会社に引き入れた。
「今度は、息子のお前と俺が、この会社をかついでいこう」と言って。

《続く》

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