北海道株式会社のケース(1)vol.059

「ウチは、プロフェッショナル集団を目指しています」

会議の設営や記念式典、あるいは結婚披露パーティーまで、催事の段取りから撤収までを行う会社だそうだ。
いわゆる「イベント屋」というのが、この【法人】の生業らしい。

(プロフェッショナル集団……)
何だか無理矢理、自分自身に言い聞かせるようなフレーズだ。

どんな会社でも、自社の専門性、または特性を発揮して何かを提供し、その報酬を受けている。

そういう意味で、“プロじゃない集団”など存在しないだろう。
法律事務所や会計事務所みたいな「士業」や、コンサルティング会社ならそんな言い方をするのもわからないではないが……。

(そこに、既に問題があるのかもしれない)
男が言うには、社長はかなり優秀な男らしい。

中学卒業後、すぐに就職した。
病気で働けない父親の代わりに、母と二人で弟妹たちを養わなければならなかったからだ。

不器用で、勉強もあまりできなかった彼には、プライドの高い大卒社員ばかりの会社では、使い走りの雑用しか与えられなかった。

大した意味もなく馬鹿にされたり、機嫌の悪い先輩の感情のはけ口にされるなど、仕事以外の苦労も沢山あったが、家族のためにと懸命に働いた。

そうして、人がやりたがらない地味で退屈な、しかし、社内業務の土台とも言える各種の下働きを一手に引き受けたことが、彼の基礎力を短期間で大幅にアップさせた。

しかし、そんな努力もむなしく、やがて人員整理で退職者リストに載った彼は、培った実力を評価されることもなく、3年勤めた会社を放り出された。

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