前回と同じ地下4階の面談室で次の依頼人を迎えたあなたは、相手の顔を見てギョッとした。
「はじめまして。北海道株式会社と申します」
そう名乗った男の顔は、先日▲▲社だと言ってあなたの鑑定を受けた、あの男だった。
あなたの問いを受けてその男が言う。
「便宜上、この顔を使ってこちらの世界の人と接触しています」
(まだおちょくられているのだろうか)
あなたは疑心暗鬼になるが、ただの悪ふざけであれだけの金額を払うとは思えない。
それに、この男が言うことが本当かどうか、あなたにはすぐにわかることだ。
あなたは男に対して、手のひらを見せるよう要求した。
(まちがいなく別人だ)
手相は明らかに違う。
たとえ何らかの方法で皮膚に細工をしたとしても、手のひらそのものから立ちのぼるこの質感(あるいは固有の気)は再現できない。
それは数え切れないほどの鑑定経験から、直感的にわかる。
この男はたしかに、前回の男とは全く違う人生を歩んできている。
(「北海道株式会社」というのはどうせ偽名だろう)
なぜ本当の名前を名乗らないのかは知らないが、あなたはもう、そういった“設定”はシカトすることにした。