青森県株式会社のケース(13)vol.083

(むしろ、問題は「撤退時のオペレーション」か)
借りている事業所用不動産からの退去に伴う手続きは当然だが、他にも問題がある。

たとえば、現在各拠点で手掛けている仕事を停止させ、本社業務に集約しなければならない。
混乱する現場の収拾が必要だ。

地方拠点業務の停止と本社集約。
これは、口で言うのは簡単だが、実際に動く人間からすれば、簡単に口で言ってくれるなと反論したくなるほど面倒が多いことだ。

それから当然、その拠点で働く社員をどうするか、だ。
本社から転勤させた社員は戻ってくる公算が高いが、現地で雇った社員は退職してしまうかもしれない。

「こう言ってはなんですが、二つの営業所は『営業所』というより『出張所』でしてね。社員同士の会話でも、まあ、のんびりしたもんです」
【法人】はそう話す。

(ということは)
あなたは2拠点の各種伝票データを見た。

起票者の欄を確認すると、すべて本社の事務員が行っている。

売上の伸長が止まってからは、現地の事務が減少しており、本社集中制度をもくろんだ社長が意識的に地方拠点の担当事務を本社へ引き上げている。

それぞれ1名ずつ置いている2拠点の事務員も、本社へ異動させようとしているところだった。

社員をドライに切り捨てることを考えていないという点で、青森社社長は、あなたが想像した人物像から外れてはいないようだ。

そんな社長の「人を受け入れる性格」が社内に行き届いているせいなのか、忙しい本社と対照的な地方拠点の社員を見下すような風潮は、【法人】の話からは感じ取れなかった。

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