おもむろにあなたは立ち上がり、部屋の中を行ったり来たりして深い思考に入った。
そのまま約30分の時が過ぎた。
その間ほったらかしにされている【法人】は、黙ったまま端然と座る姿勢を崩さない。
完全に面談をそっちのけにしているあなたに一声も掛けようとしないのは、【法人】なら当然のことなのか。
あるいは、北海道株式会社の面談後にハローワークの担当官が言っていた、【法人】の間に広まったというあなたに関する口コミにより、それなりの信頼を得ているとでもいうのか。
その辺の消息は、相手が特殊な存在であるだけに、こちらの世界の人間にはうかがいようもない。
が、今のあなたにはそれはどうでもよいことだ。
やがて、立ち上がった時と同様、おもむろにあなたは椅子に戻って腰かけた。
【法人】へは一瞥もくれずにキーボードを引っ張り出して、今度は猛然とタイプし始めた。
実は、30分前に立ち上がった瞬間、あなたの頭にひらめいたことがある。
その後室内をウロウロ歩き回っていたのは、文案を練っていたに過ぎない。
ようやく構想がまとまったあなたは、ワープロソフトで一息に書き上げた。