苦肉の策で、送受信機器の配置を変えて、妨害を防ぐことにした。
また、送受信機器周辺だけを別の素材でコーティングして、妨害の影響を減少させた。
当然、これらの変更はビア社の予算を圧迫する。
結果として、他社と交渉中だったスタビライザー機能の商談は空中分解した。
なお、声をかけたすべての企業に「指輪内にこの機能を装備できるか」と問いかけたが、「できる」と答えたところは1社もなかった。
供給機内に設置するならともかく、指輪内に仕込むなど論外と、どこも口をそろえて断言した。
つまり、初期段階で候補となった企業のすべてが「わが社ではスタビライザー製造は不可能」という答えを出しているのだ。
ただ、ヒット企画としてマスコミに取り上げられ、会員数の急上昇が現実のものとなっている現在は、採算が取れるだけの計算が立つ可能性が高い。
現時点では名工にしかできない技術とはいうものの、十分な予算が準備でき、本腰を入れて試みれば、あるいは実現できる企業があるかもしれない。
とはいえ、技術購入に資金がかかり、それから開発となると、そこまでにかけた時間を取り戻すため、余分にカネがかかる。
技術は欲しいが、取得金額はできるだけ下げたい。各社とも交渉は慎重に行うだろう。
今の岩手社に、それに付き合う余裕などまったく無い。