岩手県株式会社のケース(7)

ビール供給機は飲料メーカーとの提携で、その傘下にある企業が開発を担当した。
最初は全機能を供給機に持たせるつもりでいたが、開発費用の見積もりを出させたところ、ビア社が考えている予算をはるかにオーバーしていた。
しかし、ビア社が親会社であるアミ社の意向(威光?)を無視できないのと同様、供給機開発会社も飲料メーカーから示唆された受注予算を減額することはできず、交渉は平行線をたどることになった。

進退に窮したビア社は、供給機には音声認識及び、乱数発生と自動配給機能だけを注文し、残りはエレクトロニクス業界の一部で高い評判と噂される岩手社に依頼することになった。
岩手社にしてみれば、ビア社の予算的なしわ寄せを受けてしまったようなものだ。
(安い予算で高い技術を提供した挙句、今度はこき使われようとしているのか)
あなたは岩手社に同情した。

「今なら、もっと予算を大きくとれるんでしょうね。飲料メーカーにも強気で出られるはずでしょうから」
【法人】は述懐するかのように言うが、これも岩手社の社内で交わされる会話なのだろう。
予算を大きく取って、指輪偏重(技術上の)となっている今のスタイルを根本から変えてもらわないと、と【法人】は言う。

早朝から黙々と工作機械に取り付くオヤジさんと、来訪者への応接とオヤジのフォローでせっせと働く息子たちと事務員。みな休日返上で遅くまで頑張っている。これ以上の負荷はかけられない。今の状態が続けばいずれ誰かが倒れ、一人失っただけで岩手社は崩壊する。

(この場合、誰に対してどう働きかければよいのだろう)
あなたは首をひねった。
もし、今あなたの前に座っているのがビア社またはアミ社だったなら、あなたはその【法人】に次の行動を示唆すればよい。彼らは適宜、社内の必要な人間を誘導し、岩手社を救う働きをするだろう。

要は、指輪と供給機の造りを変えることだ。
そうすることでより多くの利用客を獲得でき、店舗展開も今よりずっとフットワークが良くなる。名工の手が動く速さでしか進まない今の状況では、彼らも首が締まるのだ。

しかし、残念ながら目の前にいるのは救われるべき岩手県株式会社。
職人肌のオヤジさんは、手練手管を使ってビア社を動かすような細工には縁遠い。それに、目の前の巨額な利益をむさぼろうとするビア社とアミ社の欲望はあまりにも強大だ。いかに【法人】がオヤジさんを誘導したとしても、効果が表れるのに時間がかかりすぎて、岩手社に犠牲者が出る方が早いだろう。

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