▲▲社のケース(4)vol.051

「ここ最近のことですが、営業部や購買部だけでなく、ずっと中立的だった総務や経理まで、急に亀裂が入り始めました。家族的な雰囲気が特色で、入社後は会社が大好きになる社員が多くて、それが部署間の交流や接客にも相乗効果をもたらしていたのですが、そういった利点が失われて、これまでなかったようなクレームも入るようになりました」

土壌が悪化すれば作物に影響が出る。
その影響は作物を食べた人間にも及ぶ。

社員が不安になると会社の生産性は下がる。
生産性が下がれば事業の品質が落ちる。

健康の悪化で病気になるのも、顧客からクレームが来るのも、メカニズム的には同じように思う。

これは、話を聞いたあなたの頭にふと浮かんだ他愛ない考えで、すぐに意識から消し去ろうとしたのだが、せっかくだから男に伝えてみた。
いや、「伝える」というより「垂れ流す」ように声に出してみた。

後で気づいたことだが、この瞬間、あなたは本当の意味で、相手の最大のニーズをとらえることに成功していたのである。

【法人】鑑定の真のコツは、そこにあるようだった。
経営のテクニック相談ではなく、【法人】の生き方(生活態度や価値観の持ち方)に焦点を置くのが、真の満足を引き出す最良の手段だったのだ。

しかし今の段階ではそこに気づいていないあなたは、相手の期待値が急速に高まっていることには思いが至らない。淡々と話を聞き続けた。

「先代社長は今も会長として健在ですから、このちぐはぐな社内の空気感を正してくれるかと思ったのですが、どうもうまくいかず、自力での解決は難しいと考え、外部の力に頼ろうと、基幹システムの強化を図ってみました」

《続く》

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする