▲▲社のケース(4)vol.051

こじつけに近いあなたの質問に、相手はハッと驚いた表情を見せた。

いや、表情を見る前に、相手の身体の緊張が、そのまま伝わってきた。

言葉や表情は、こちらの言葉を論理的に理解した後に出てくる二次的な反応だが、筋肉の反射は見せかけを繕う前の一次反応なので、あなたは割と信用している。

それも、意図しない緊張の場合は一層信用度が高い。

そして、意図しない緊張を引き出すのに効果的なのは、そのときあなたの目が相手を見ていないことだ。見られていなければ隠す必要がないので、相手はオープンでナチュラルな反応をする。

手のひらに視線を落したまま、視覚以外の感覚で相手の微細な緊張を感じ取るすべを、あなたは幾多の鑑定経験から身に付けていた。

「得意先の変革に対して、仕入先のそれが追いついていない」というあなたからの質問のうち、相手の緊張は後半の発声に対して生じた。

ということは、十中八九『仕入先』のほうに何かがあるのだろう。

そのことに見当がつきながらも、あなたは相手の言葉を待った。

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