▲▲社のケース(4)vol.051

(このタイプは、誠実で思慮深く、心優しいタイプだ)
と、あなたは判断した。むろん、手を見てそう思った。

本来、しゃべるより聞き上手なはずで、気持ちよくしゃべり続けた相手のほうから「この人、話が上手い」と評価されるタイプだ。
そして、「また、話したくなる人」と評判が立つ可能性が高い。

だから、こちらがしゃべってしまうと「いつものパターンの表層的な社交」にレベルダウンし、相手の本音が聞けなくなる可能性がある。

しゃべらせなければ実のある鑑定にならないだろう(これも、もちろん個人相手の場合の話だが)。

「なぜ、それがわかるのですか?」
仕入先の変革が追いつかない社内事情を尋ねたあなたに対し、男は当然の質問をした。

これが困るのだ。
個人相手の鑑定なら良いが、今は【法人】相手という設定だ。

個人に切り替えて話を進めたらまずいのだろうし、だからといって【法人】用の鑑定トークはあまりにも荒唐無稽だ。
しかし、今はそちらにシフトして話さねばなるまい。

あなたは左右の運命線の食い違いに加えて、生命線が途切れて外側からカバーされている部分を示した。

「取引先線と取引線」という、あなたが勝手に作った表現がしづらいのは当然だが、【法人】相手だと「運命線と生命線」という言い方も相応しくない。

だから、具体的な表現を避け「主要な2線」という言葉を使った。

主要な2線で右と左といえば、会社運営でいえば多くの場合「売上と仕入」と言う表現がハマる。男はそれで納得した。

何歳という言い方がなぜできるかというと、手相には流年法という計測の仕方があるのだが、その説明は個人でも【法人】でも同じだから苦労はない。

「今後、どうなるかわかりますか?」
男の次なる質問に、あなたははっきりとは答えない。

それは解釈次第だが、良い解釈を引っ張り出すための鑑定であるという見解を話し、今何が起きているのかを話すよう促した。

「2代目が就任したときから、それまでの社内改革路線に賛同しない社員が現れてきて、社内が二つに割れているのです」

それは職種間の分裂ではない、とあなたは瞬時に判断した。
この男が直面している分裂は、世代間のものであるはずだ。

そう断定し、そのままを告げると、男は再び驚いた。
「二つに割れた」というキーワードから、世代間ギャップを連想するのは至って普通だが、今のこの局面であまりにはっきりと言い切るあなたが謎めいて見えるのだろう。

「そのとおりです。ネット通販の企画が軌道に乗るまでは、まさに全社一丸だったのがウソのように変わってしまいました。ネット事業の企画者だった現社長が就任した直後も社内は心ひとつといった様子だったのですが…」

興味深い話に、あなたは耳を傾けた。男は先を続けた。

「官庁や学校、企業向けの流通改革に着手してから、古参社員たちが急速に非協力的になっていきました」

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