転職門前払いとハローワークからのオファー(2)vol.002

職探しが困難な現実を、あなたはこの1年ほど、身をもって体験中だ。

前の会社は求めて辞めたわけではないが、形式上は『自己都合による退職』だ。

次の職場を決めてから退職するはずが、今や失業給付が終了し、蓄えを食い尽くすほどにまで切羽詰まっている。

あなたはずっと事務職だった。
わりあい器用で、ずいぶん幅広く活躍してきた、と思う。
転職回数が多かったからこそ、それが実感できる。
総務、経理、人事、営業事務、企画etc.

就職支援のカウンセリングでも、『その順応性の高さは長所になるから、そこをアピールポイントに』というアドバイスを何度も受けてきた。

が、それは違っていた。

順応性の高さは、同じ職種で長年やってきた同士の競争では有利だが、あなたは複数の職種を経てきて、どの職種もそれほど長くは経験していない。

若いときなら経験年数が少ないことを、順応性でカバーできるが、あなたの年齢ではそういうわけにはいかない。

十年戦士の応募書類は圧倒的な説得力を持つが、あなたの職歴では、どんなに工夫して書類を作っても、人事担当者に斜め読みされるだろう。

いや、同じところに十年以上勤めたことはある。しかし、官庁なのだ。
これは意外なハンデキャップになる。

10年以上官庁にいたことが逆に、『民間では通用しない理由』と宣言されたことも、一度や二度ではない。

公務員時代にはバリバリやっていて、それなりに自信を持っているあなただったが、それは早々に封印しなければならなくなった。
だからといって、民間経験に特化したアピールもまた、大きなマイナス要因をはらんでいる。
職歴に統一性がないからだ。

生活のために職種で贅沢を言えない状況だった。
とにかく目の前の職に飛びつくしかなかった。

数百社へのエントリーで、面接まで進めたのは、たったの6社。
その希少なチャンスにかけた願いも、あえなく散った。
面接の悪夢を見てしまうのも仕方あるまい。

就職活動にすべての気力、体力、資力をつぎ込む毎日。
少ない貯蓄が余命のように感じられ、恐怖が増大する。
やはり、職種にこだわってはいられない。こうなると、正社員も派遣もバイトも関係なくなってくるのだ。

(まずはハローワーク)
簡単な朝食を済ませた後は、日課となっている【ハローワーク詣で】だ。
あなたは澱んだ空気の充満するアパートの部屋を出た。

《続く》

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする