投稿者: 469buncho

  • 皮肉な「書類選考通過」!二股の誘惑?(7)vol.021

    ハローワークとの契約は、不定期/不自由/収入額不明瞭。
    この3要素が、前向きな気持ちでの締結をためらわせる理由だ。

    しかし、継続契約の可能性があり、少ないが確かな収入が見込まれる話に対し、▲▲社の話は当然不採用に終わることもあり得る。

    だが、▲▲社の人事担当者は、官庁経験の中でもあなたが秘かな自信と誇りを感じている「出先機関の事務責任者の経歴」にフォーカスし、高く評価してくれているらしい。
    こんなことは初めてだ。

    (今度こそ、うまくいくのではないか?)
    正解のない堂々巡りを繰り返す中で、こんな考えも浮かぶ。

    (▲▲社は、しごとセンターの案件だ)
    ハローワークへは、このことを隠しておいて、まずは面接を受けてしまうことが可能だ。
    可能性はできるだけ確保しておくという考え方だってあるだろう。
    生活がかかっているのだから。

    (いや、しかし・・)
    徹底した守秘義務のもとで委託業務に従事する契約者の行動は、ハローワークで徹底的に調べられるかもしれない。

    (やはり、契約日の先送りを打診しよう)
    たったふたつの話を受けただけで、こうも振り回される我が身が不甲斐ない。
    が、あなたとしては、そのほうがすっきりして面接に臨める。
    普通の求人とは違うのだ。仕方がない。

    とはいえ、せっかくのチャンスを、正体不明のオファーと天秤にかけることが、あなたの人生にとって、正しいことなのだろうか?
    結局、伸びやかな金曜日は、あなたには訪れなかった。

    《続く》

  • 皮肉な「書類選考通過」!二股の誘惑?(6)vol.020

    思わず頭を抱える。
    これは、契約条項に抵触するだろう。

    契約書で該当する箇所を探すと、やはり、契約期間中の企業との関わりを禁じる旨が記載されている。
    今さらながら、『他企業との接触を契約で禁じる』とは、苦しい就職活動にあえぐあなたにとって、なんと厳しい条件だろう。

    だが今はまだ契約前だ。
    面接が決まった▲▲社の件の結果が出るまで、締結日を待ってくれないだろうか。

    あなたは、ハローワークへ連絡を取ろうと急いで体を起こし、携帯電話に手を伸ばした。
    呼び出しのコールを聞きながら、今後のことを考えた。

    月曜に行われる▲▲社の面接は1次だ。
    だから、その後、役員か社長に会うために、少なくともあと1回は別の日取りで面接がセットされるはず。

    もし内定がもらえるとしても、最短で2~3週間後にはなるだろう。

    一方、ハローワーク担当官は、現在受付を待っている法人がいるから、契約締結後2週間以内には依頼の連絡をすると言っていた。

    そんな状況で、こちらの都合で契約を遅らせてくれとは言いづらいが、就活に関しては融通をきかせてくれるのではないか。なにせ、ハローワークなのだから。

    数回のコールの後、電話がつながった。
    勢い込んで話そうとしたあなたの勢いが止まった。

    業務時間外のアナウンスだ。時刻は18時半。
    明日の土曜はちょうど閉庁日で、ハローワークが開いていない。

    事情は月曜の朝に話すしかない。

    《続く》

  • 皮肉な「書類選考通過」!二股の誘惑?(5)vol.019

    かつてない大波に、あなたの心は躍動した。
    すぐに帰って、▲▲社向けに作った応募書類を読み直し、面接でのアピールポイントを整理しておかなくてはならない。
    飛び上がるようにストゥールから立ち上がり、カップに残ったコーヒーはそのままにトレイを片付けた。

    「ありがとうございます」
    店員の声を背中で受けながら、小さな会釈をして喫茶店を飛び出した。

    アパートに帰ると、早速パソコンの電源スイッチをオンした。
    買ってから6年目を迎え、いい加減くたびれたマシンだ。

    なかなか立ち上がらない画面にイラつきながら、あなたは手帳を開き、さっきメモしたアドバイザーからのメッセージを見返していた。
    面接の想定問答をイメージして紙に書こうと思ったが、適当な用紙がない。

    あなたはバッグから、昨日ハローワークで出力した求人票を引っ張り出した。
    今日応募しようとして、結局できなかった3社分のものだ。

    頭に浮かんだフレーズが消えないうちにと、求人票の余白に書き込もうとしたとき、ハローワークの担当官が口にした言葉がよみがえった。

    『徹底した守秘義務に基づいて、多くの【法人】にお会いいただくことになるので、就職活動で企業と接触することは禁じられます』

    あなたの手は止まった。

    《続く》

  • 皮肉な「書類選考通過」!二股の誘惑?(4)vol.018

    店の時計を見上げたきっかけは、バッグの中で振動している携帯電話だった。
    表示を見ると、しごとセンターのアドバイザーからだ。

    (こんな大事なときに・・)
    イヤな相手の横やりを迷惑に感じながら、あなたは電話に出た。

    「先週応募された▲▲社から、急きょ面接に来てほしいとお話がありました」
    あなたは仰天した。
    ▲▲社とは、今、あなたが応募している企業の中で、最も魅力を感じている会社だ。

    「メールでも送りましたが、先方の面接希望日が月曜日なので、早めにお知らせしようと思って念のためお電話しました」
    あなたはあわてて手帳のページをめくり、アドバイザーの話を書き留める。
    さっきまでメモしていた相談受付のイメージは、一瞬で頭から消し飛んだ。

    「メールのほうに詳細を書いてありますので、確認して当日までにご準備ください」
    そう言って、アドバイザーは通話を終了した。

    (ノッてきたか)
    複数の会社から同時に内定をもらう話は、就職支援セミナーで毎回のように聞かされたが、あなたにとっては現実感のない、おとぎ話にしか思えなかった。

    しかし、とうとう自分にも、そんな状況が訪れてきたような気がする。
    アドバイザーは、あなたの職歴の中の、官庁に関する経験が先方の担当者に評価されたと言っていた。
    あなたが地方の出先機関で、事務の責任者だった時の記述を読み『特に会ってみたい』 と言ったそうだ。

    応募書類添削セミナーで「効果的なエピソードのはさみ方」を教わったが、その効果がようやく芽を吹いたのだろう。

    《続く》

  • 皮肉な「書類選考通過」!二股の誘惑?(3)vol.017

    (求められているものは何か)
    ITの専門知識や技能はいらないということは確認した。

    まずは、相手から問題点を引き出すことだ。
    どの部署の人と会うのかは分からないが、まず話を聞いたうえで、あなたのプランを伝え、どんな形で関わるかを決めていけばよい。

    【ITによる情報資産の活用技術】
    それが、あなたが提供したいコンセプトだ。
    しかし、そこに至るまでに絶対的な必須条件は、技術ではなく人間関係なのだ。

    IT技術そのものではないという点がポイントだ。
    それは後から調達できるということを、あなたは経験から学んだ。

    情報資産の活用技術は、IT技術だけでは得られない。
    IT技術に人間関係力を掛け合わせて、初めて得られるのだ。

    まずはその見通しが立たないと、成功はほぼ見込めない。

    相談者と向き合った時のイメージが、あなたの頭の中で、徐々に形になってくる
    集中していて気づかなかったが、気が付くとずいぶん時間が立っていた。

    《続く》

  • 皮肉な「書類選考通過」!二股の誘惑?(2)vol.016

    繁華街のカフェは、どこも満員だった。
    ランチタイムに続いて、ティータイムもきっと混むだろう。
    時間をつぶすため、いつもの道を外れて、少し遠回りな川沿いの道をゆっくりと歩き、夕方近くにようやくカフェに入店した。
    昼食を摂っていないので空腹だったが、サンドイッチのセットは高いのでホットドッグとコーヒーにした。

    出入り口に一番近いストゥール席を選び、コーヒーを乗せたトレイをテーブルに置いた。
    通りを歩く人たちの姿に気を紛らわせながら、煮詰まりそうな思考を丁寧に進めたい。

    ホットドッグが出来上がったので、カウンターまで取りに行く。
    斜め半分にカットされたコッペパンに、ソーセージが挟まっている。
    小さく噛みちぎって、ゆっくりと念入りに咀嚼する。
    節約生活で、少量の食事を余儀なくされるときの鉄則だ。
    こんなひもじい食事に別れを告げられる日はやってくるのだろうか。

    小腹を満たしたあなたは、コーヒーを一口飲み、本格的に考え始めた。
    先刻、ハローワークの担当官が口にした、いくつかのポイントを思い返す。

    ・ITエンジニアとの連携を重視する経営者がたくさんいる
    ・経営者と事業について語り合えるエンジニアは多くない
    ・あなたが依頼されるのは、調査し、解決手段を講じ、相手に投与すること

    ITそのものの従事者になれという話はなかった。
    そんな話なら、素人のあなたに白羽の矢は立たないだろう。
    なにしろ “ 10年戦士 ” の技術者は、掃いて捨てるほどいるのだから。

    《続く》