投稿者: 469buncho

  • 就活禁止? 低賃金コンサルタントへのいざない(2)vol.009

    しかし、なぜか誰もがこんなにも価値を生む「データベース活用」に手を付けない。
    だから、企画も実行もあなたの独壇場だった。

    こういったことを、応募書類作成セミナーで書いてみたのだ。

    「私どもでは、この点にとても関心を持ちました」
    担当官の言葉にあなたは引き込まれた。
    こんなことを言われたのは初めてだったからだ。

    あなたの独壇場だったデータベース活用は、就活の自己アピール度が弱い。
    ライバルがいないため競ったエピソードがなく、その成果も金銭の価格では示せないからだ。

    応募書類でこのスキルを一言で表現する適当な名称がないことが、あなたにとって最大級の悩みだった。

    そんな中、目の前のハローワーク職員はあなたの技能にとても関心を持ったという。

    そしてさらにこんなことを言う。
    「経営者の中には、ITで自社事業の強みを増すために、ITエンジニアとの自在なコミュニケーションを取りたがる人がたくさんいます」

    (それは良くわかる)
    あなたは、かつて自分が勤めた人材会社の社長もそう言っていたことを思い出し、担当官にうなずいた。

    「ご存じかもしれませんが、残念なことに、経営者と会社の事業そのものを語りあって、社長さんを満足させられるエンジニアは多くないのです」

    (それもそうだろうな)
    あなたは実感と共にうなずく。
    社長が、朝礼でボヤくように言っていた。

    『連中は宇宙語で話すから、会話にならない』 と。
    『そして、こっちの言うことを理解できないから、訊いてることに回答してこない』とも言った。

    ボヤキではあるが、何度も繰り返すのはそれだけ期待も大きいということだ。経営者の、情報活用へのニーズが高いことがうかがえる。

    《続く》

  • 就活禁止? 低賃金コンサルタントへのいざない(1)vol.008

    担当官はあなたに問いかける。
    「長所面と短所面、どちらのエピソードにも、 頻繁に出てくる事柄がありましたね。覚えていらっしゃいますか?」

    (データベースのことだろうか)
    たしか社会人3年目の人事異動で、22歳のあなたは前任者から膨大な作業を引き継いだ。
    当然ながら、下っ端のあなたには、作業を分担させられる部下などはいない。
    部下の代わりにできるのはパソコンだけだ。

    そのときに、パソコンを作業人員の代替と考えず、パソコンの中に組織を構築しようとした点が、その後のあなたの人生を変えたといっても過言ではない。

    その目的のためにデータベースソフトを使い、パソコンの腕前は上がったが、プログラマーなどの技術系は目指すことなく、データベースでの組織作りに強い関心を持った。

    つまり、『システム化』だ。
    しかし技術系ではないため、あなたがしたことといえば、他人に働きかけて自分も混ざり、作業工程や担当者間連携などの決まり事を変更し、まずは実務面を合理化することだった。

    そしてそれを補完するのがパソコン(主としてデータベース)だった。

    これをいくつもの職場で実践してみて思ったのは、官庁も民間も関係ないということだった。

    「部署をまたがる横断」だとか「現場実務とシステムの関連付け」など、経営陣が頭を悩ます問題は、データベースを触媒に使うと、意外なほど容易に実現できる。
    サーバーの中には、宝物が埋まっている。

    《続く》

  • 転職門前払いとハローワークからのオファー(7)vol.007

    「その後いかがですか? 今、ご希望に合う求人はありますか?」
    担当官はそう訊ねてきた。

    はっきり言って、今のあなたは希望などと贅沢を言える状況にない。
    買い手市場の弱者代表というほど自信を失っている。
    気弱に答えるあなたの顔をじっと見て、担当官はゆっくりとうなずいた。

    ……

    少し間が空き、違和感をおぼえつつもあなたは次の言葉を待った。

    「本日こちらへお越しいただいたのは、私どもからの要請を、受けて頂くご意思があるかどうかを確認させていただきたかったからです」

    (ついに来たか)
    あなたは内心で身構えた。
    ここからが本番(フランチャイズの加盟提案)だ。
    しかし、担当官が口にしたのは、またも予想と違った事柄だった。

    「『応募書類作成セミナー』で、書類の添削を希望されましたよね?」

    (どういうことか)
    あなたはさらに様子を見た。

    職歴から判断して、こういったことにご興味をお持ちと思われますが……
    みたいな導入トークから、学習塾の経営とか、マッサージ店開設とかそんな話が始まると思っていたのだ。

    確かに、担当官が言うように、あなたはセミナーで書類添削を希望した。
    実はそれこそが、あなたが強く求めていたものだったからだ。

    応募書類添削を受けられる機会はあまりない。

    超有名な転職サイトで見つけた【添削サービス】に申し込んだら、『今、ご紹介できる適当な求人案件がありません』という無造作なメールが返ってきたことがある。

    添削サービス希望の話がすり替えられていることに、あなたは腹を立てた。
    結局、登録者を増やすためだけのエサで、転職サイトの応募書類添削はアテにならないと認識した。

    また、ハローワークの窓口担当者に応募書類を見せ、アドバイスを求めたこともある。
    しかし、担当者の当たりはずれも多く、無駄足になることも多かった。
    窓口にいるから書類作りのセンスがある、という保証はないから当然ともいえるだろう。

    そして、「しごとセンター」では、担当アドバイザーとよほど相性が悪いのか、会話が噛み合わず、対面中ずっと圧迫され続けて、会うこと自体が苦痛だった。

    初対面でのオリエンテーションが済んだ後、何度もカウンセリングを勧められた。
    書類添削には良い機会だったのだが、彼女とは再会したくないので一度も応じたことがない。

    そんな中、思いがけず目についたこのサービス。
    どうしても受けたかった。

    『セミナー開催前の1か月間に、ハローワーク求人に30社以上応募していること』が条件だ。
    あなたは問題なく、それに該当していた。
    我ながら(ぶざまだ)と思いつつも、これを受けないという選択肢はなかった。

    そして、2日間のセミナーでさらに作りこんだ書類を、祈るような気持ちで講師に渡したのだった。

    (次カテゴリー『「受け負け」な請負』へ続く)

  • 転職門前払いとハローワークからのオファー(6)vol.006

    「どうぞおかけください」
    思ったより抑えめなトーンの声に、あなたは失礼しますと応じて椅子を引きながら、頭の中では断る理由を数パターン考えていた。

    ・加盟金を払えないこと
    ・協力者のあてがないこと
    ・【先輩加盟者の声】などの情報はマユツバであること
    ・本部の販路扱いにされ、指導とは名ばかりの圧力が想定されること
    ・その圧力に「アドバイス料」という名のフィーが発生しそうなこと
    ・解約ペナルティーを払えないこと

    まあ、こんなところだろうか。

    「こんなところにお呼びして申し訳ありません。私は起業支援の【法人】受付部門を担当しております××と申します。よろしくお願いします」

    この女性はアシスタントだと思っていたが、そうではないらしい。
    あなたはあいまいに応じながら、改めて女性の顔を確かめるように見てみる。

    落ち着いた事務的な雰囲気だ。
    頭の中に詰め込んである無機質なフレーズ(フランチャイズの募集要項)を一方的にまくし立てるようには見えない。

    が、それでも一応、
    「このくらいの収入が見込めます」
    「何月何日に説明会を開催しますので、詳しいことはそちらで訊けます」
    「○○公社では、有利な条件で加盟金の融資を行っています」

    などという説明がいつ開始されるか、あなたは警戒しながら彼女の様子をうかがっていた。
    しかし、担当官が話し始めたのは、あなたの想定外の事柄だった。

    「今年の3月にハローワークで実施した、『応募書類作成セミナー』に参加されましたよね?」
    そういえば数ヶ月前、2日間にわたってそんなセミナーを受けた。
    「履歴書」、「職務経歴書」、「応募書類送付状」
    などを、必死に作りこんで持って行ったことを思い出す。

    たしかにセミナーはあなたの応募書類を充実させる役には立った。
    だが、あなたの就活をサポートするものとは言い難く、だからこそ、今もこうしているわけだ。

    《続く》

  • 転職門前払いとハローワークからのオファー(5)vol.005

    口当たりのいい説明で加盟金を集めるフランチャイズ本部もあると聞いたことがあるあなたは、某大手転職サイトから届く『フランチャイズ加盟』のオファーを胡散臭く思っている。

    就職活動に困っている弱者をターゲットにした販促だと、つい悪意的に考えてしまうのだ。

    「勤め人を目指すだけが収入確保の手段ではなくて、こんな道もある」というチャンスを与えていると、企業側はいうのかもしれないが、追い詰められた精神状態からフランチャイズ起業に鞍替えして、うまくいくとは思えない。
    加盟オーナーを募るなら、通常の広告で十分じゃないか。なぜ転職サイトにこんなものを載せるのか?

    オファーなど滅多に来ないあなたは、通知を受けると特別に気持ちが湧き立つ。
    いそいそとサイトにログオンしてメッセージをチェックし
    ≪フランチャイズ加盟≫
    という文字をみると、急速に心が冷える。

    “小金だけはあるんだろ?”

    という意味のメッセージに思えて、期待した分だけ余計に傷つく。
    無職、貧乏の二つの泣き所を同時に突かれることになるからだ。

    まあ、求人サイトは営利企業だから、広告掲載料でも成功報酬でも、とにかくビジネスできれば良しとするだろう。だから求人案件の中でフランチャイズ企業が加盟店を募っていても、ある意味当然と言えるのだろう。

    しかし、ハローワークまでがそんなことをするか?

    (若い女が相手だからと、心を許したりはせず、甘い話には絶対に乗らない)
    勧誘なら即座に断って、ついでに、時間を無駄に奪われたことに抗議でもしてやるか。弱者を食い物にするなと……。

    《続く》

  • 転職門前払いとハローワークからのオファー(4)vol.004

    (呼ばれたことに気づかなかったらしい)
    総合受付へ戻ってそのことを告げると、随分待たされたあげく、別室の場所を示され、そこへ行くように言われた。

    (特別な紹介案件でも用意してもらっているのか?)
    毎日訪れた記録は当然残っているだろう。それが高評価を呼んだのかもしれない。
    あなたはドキドキしながら略図のとおりに歩き、指定の部屋へ向かった。

    (ここだろうか?)
    ドアプレートの室名を見て、あなたは不審に思った。

    『起業支援相談室』

    ドアにはポスターが貼られている。
    「起業セミナー開催のお知らせ」
    「融資・助成相談会。○年 ×月の日程」
    「中小企業振興公社窓口移転について」など

    あなたに起業願望はなく、当然、ハローワークにもそんなことを言った覚えはない。
    適当な場所がないから、たまたまこの部屋を使うのだろうと考えながら、ドアをノックして開けた。

    部屋の中は、テーブルを二つくっつけて会議机代わりにしたシンプルなレイアウトだ。
    6人も入れば息が詰まりそうな狭い部屋で、テーブル越しにあなたを待っていたのは、20代半ば頃とみられる若い女性だった。

    中肉中背、締まりのあるムダの無いスタイルを紺色のスーツで包んでいる。
    肩までの黒髪が服と相まって色白の肌を一層引き立てている。
    テーブルに隠れて全身は見えないが、張りのある立ち姿勢には、
    女性らしい自然なしなやかさが加わっている。
    かすかな笑みを浮かべてあなたを迎え、おずおずと入室したあなたへ、ドアを閉めるよう促した。

    どうやら相手は彼女一人らしい。
    何の話か想像してみたが、この部屋が起業支援相談室であることからの連想で、
    (フランチャイズ加盟の勧誘ではないか?)という疑念が湧いてきた。

    《続く》