投稿者: 469buncho

  • いっそ、占ってしまえ!(4)vol.045

    自分からも他人からも未知の領域に潜在する自分。

    当然それは、本人が内省視しても視界に入ってこない。
    もちろん、他人からも見えないから、対人接触のリアクションからうかがい知ることもできない。
    だからこその「未知の領域」なのだ。

    unknown-houjin
    もっとも、無理に解明しようとしなくても、本人の学びや成長によって「4(Unknown Self)」が「2(Blind Self)」や「3(Hidden Self)」に浮上することはある。

    それが長所であれば伸ばし、短所であれば正せるようにもなる。
    あるいは、他人に見せたくなければ隠せるようにもなるだろう。

    いわば、「4」の扱いは時間の経過と、偶然に任せるしかないとも言える。
    隠れた存在のまま、本人の人生に陰陽をもたらすブラックボックスが「4」の領域の正体だ。

    しかし、そんな「4」に対し、偶然にもあなたは少年時代に、アプローチするきっかけを得ていた。
    無論その頃は、「ジョハリの窓」などという難しい理屈などは知らない。

    テレビで興味を持ち、何となく始めた『手相占い』というものが、いつしかあなたの特技になっていた。

    『本人や周囲が気づいていなくとも、とにかく手のひらに書いてあるデータを読み解き、目の前の依頼人に合わせて説明の文章を組み立てる』

    高校生の頃ではあったが、多読家で、作文が得意だったあなたは、クラスメートを片っ端から鑑定した。
    友人以外にもアルバイト先などで大人たちの手相も鑑定し、時には鑑定書を書いて渡すこともあった。

    意外に評判が良く、鑑定実績が100人を超えたのは、ほんの数ヶ月後のことだった。

    《続く》

  • いっそ、占ってしまえ!(3)vol.044

    調べた企業情報をそのまま吐き出すのではなく、使いこなす。
    それも、プロのレベルで出来なくては、相談業務従事者としては失格だ。

    ちなみに、ハローワークが、プロのコンサルタントや、ファンドマネジャーにこの面談の担当を依頼しない理由は、様々に考えられる。

    【法人】という摩訶不思議な存在がいるという荒唐無稽なことが、もし本当のことだとしたら、彼らとの付き合いを『商用』として捉えるのはそれら職業人(プロ)の本能といえる。

    決して表に出ない企業の裏情報を知り、何らかの形で利用する可能性がゼロではなく、それでは社会に混乱をきたす危険性が高いとして、あなたみたいなアマチュアが抜擢されるのだと思う。

    たしかにあなたはアマチュアだが、これまで成り行き上で、コンサル的な働きをするケースが比較的多かった。
    応募書類ではその経験をアピールできずに苦しんできたが、今回はそれが活かせそうだ。

    unknown-houjin
    「2(本人が気づいていない=Blind Self)」の部分に踏み込むこと。
    「3 本人の隠し事=Hidden Self)」へアプローチすること。

    両方とも、やればできるかもしれないし、できるという自信もあるが、それをするつもりはない。
    無論、1(社交、表層=Open Self)は論外だ。

    あなたが、ハローワークの地下4階で、相手が【法人】と名乗ったときすぐに思いついたのは、この意味不明な「4」(自分にも他人にも未知の領域=Unknown Self)へ直接アプローチすることだった。

    《続く》

  • いっそ、占ってしまえ!(2)vol.043

    ジョハリの窓


    心理学ではよく知られた「対人関係における気づきのグラフモデル」
    4つに仕切られたマトリクスは、自分自身に対する、自己と他者の理解についての領域を表している。

    1.Open Self
    自分が知り、他人も知る、『自他ともに公開中の』自身の姿
    2.Blind Self
    自分は知らず、他人からは見えている、『気づけない』自身の姿
    3.Hidden Self
    自分だけが知り、他人には見せていない、『気づかせない』自身の姿
    4.Unknown Self
    自分にも他人にも気づけない、『潜在する』自身の姿
    【法人】に、これを当てはめてみようというのがあなたのプランだ。

    1~4のうち、最初の3については以下のように行う。

    1.一般的な社交レベル
    2.コーチングや指導といったところ
    3.相手に自己開示を促す作業


    1は表層的な会話で十分だろうが、2を行うには相手を導ける抜群の経験や技能と、確かな指導力を持っていることが必須だ。
    3は、相手への共感的理解が必要で、高い人間力を要するのが一般的だ。

    ちなみに4はその存在を感知できないので通常、コミュニケーションの題材にできない。
    いずれにしても2と3については当然、1の社交レベルとは次元が違う。
    素人のマネゴトでは到底務まらない。

    ではこれらのことを【法人】に置き換えたらどうなるか?
    1は公開情報に基づいた、表面的な対話で交流する浅いレベルだ。
    これに頼って面談を進めるようでは、相手の【法人】には、それを見透かされてしまう。
    早々と契約解除だ。今回あなたがこれをやれば、継続契約にすらならないだろう。

    それに対し、2と3は、コンサルタントやファンドマネジャーレベルといえる。
    最低でもこの水準が要求されるはずだ。

    《続く》

  • いっそ、占ってしまえ!(1)vol.042

    【法人】相手の面談で、後日へ持越しとなったことを告げたあなたは、担当官からその際の説明を受けて帰宅した。

    『次回面談は3日以内』という規定があるようで、どうやら次回面談の約束をした受託者は、 あなたがはじめてではないようだ。

    それはそうかもしれない。
    【法人】のことを信じるかどうかは別にして、受けた相談にそつなく対応するため、いったん企業名を知ってから、改めてその会社のことを調べようとするのは至極当然だ。

    ホームページ、会社四季報、有価証券報告書、帝国データバンクからネットの2ちゃんねるまで、企業情報を調べようと思えばいくらでも情報ソースがある。
    求人情報や、商品に対する通販サイトの口コミレビューだって、立派な情報だ。
    ひと月もかけて調べつくしたら、 ずいぶん詳しくなるに違いない。

    ハローワークが「3日以内」と期限を切るのは、【法人】側の要求もあるだろうが、日数分だけ受託者に支払う報酬額が発生するからという事情もあるに違いない。

    情報収集に時間をかけて契約期間を長引かせる受託者も、かつてはいたのかもしれない。
    せっかく得た収入源を確保しようとする人がいるのもよくわかる。

    その一方、地下4階という怪しげな場所で、いきなり二人きりにされて事態が呑み込めぬまま、行き当たりばったりの頼りない面談をしたあげく、「能力なし」と一回限りで切り捨てられる『正直で素直で、小心な受託者』も、ずいぶん居たことだろう。

    そんな中、「まず時間をくれ」と要求できる図々しさを持った中のひとりだ、とあなたは思われたかもしれないが、担当官の思惑など、あなたの眼中にはない。

    そんな思惑とは次元を異にする、非常識なプランにあなたの頭脳は没頭していた。

    《続く》

  • 【法人】現る!(8)vol.041

    そのとき、あることが頭の片隅にひらめいた。
    イメージは一瞬で筋書きに展開され、思う間もなく言葉となって発された。

    思考が、行動に追いついていない。
    あなたには珍しいことだが、そういえばさっきから、その連続だ。

    かろうじて認識できたあなたの思考は二つしかない。
    (茶番に付き合わされる筋合いはない)
    (逆に、こちらから茶番を仕掛けてやる)

    あなたが言ったのは、今回の相談内容を一言で言えというものだった。
    相手は逆らわず、たったの一言でそれを告げた。

    それだけ聞き取ると、あなたは後日の再面談を要求した。
    相談内容へは、その時に回答すると告げた。

    「希望日はありません。ハローワークへ面談日を申し入れてください。私はその日にもう一度こちらへうかがいます」
    男はあっさりと承諾した。

    あなたは席を立った。

    担当官から、面談終了後は、あなたが先に退出するよう説明を受けている。
    地下4階に止まったままのエレベーターは、ボタンを押すとすぐに扉が開いた。
    あなたはその足で、担当官のところへ向かった。

    面談時間:5分(うち、沈黙時間4分余り)

    (次カテゴリー『オーセンティック・セルフ』へ続く)

  • 【法人】現る!(7)vol.040

    ほうじん

    4文字の音に、様々な漢字や慣用表現を当てはめてみた。
    真っ先に思ったのは『邦人』だ。つまり日本人。

    だが、それだと意味がつながらない。
    何とも皮肉なことだが、▲▲社についてあなたは詳しい。
    就職を夢見て必死に調べたから、▲▲社が日本法人であることは良く知っている。

    この男が日本法人に勤める日本人だということが、この局面で何の説明になるというのか。
    釈然としない空気感を発するあなたに対し、男は言葉を続けた。

    「ハローワークから、【法人】部門の依頼としてお話を受けているはずですが、その【法人】部門とは、直接【法人】と接触する、特殊な役割を担っている部署なのです。そしてこのことは、内密にされています」

    だから、なんだ。
    その法人から来た【個人】ではないか。
    いい加減な茶番は聞く耳を持たない。
    あなたは無言の気合で、相手の言葉を弾き飛ばした。
    さすがに男も、辟易し始めたようだ。

    「私はその【法人】なのです。個人ではありません。にわかに信じ難い話でしょうが、実在するのです」
    少し言い訳じみた感じでそう言った後、小さくため息をついて話を続けた。

    彼によれば……
    【法人】は、一部特定の立場にある人間以外とは接触しないという。

    一般的に、登記簿やホームページ、コマーシャルなどで、世間に姿をさらしている法人格の意思決定や行動は、そこに所属する個人たちが行う。

    しかし、法人格のあらゆる活動のきっかけを生み出し、会社という「場」を醸成する根本的な力は、すべて【法人】が担っている。

    ということらしい。
    作り話としても、興味深いことだ。

    ITのシステムに例えれば、通常はインターフェースを通じてしか情報を抽出したり、書き換えたりできないのだが、そこをすっ飛ばして、サーバに直接データを書き込める権限を持っている人が【法人】だというのだろう。

    内心面白がりながらも、あなたは身じろぎせず、黙って男の話を聞いていた。
    「あなたをダマす話の前振り」もしくは「そういう妄想にとりつかれた、ただの変人」。
    そのどちらとしか考えようがない。

    当然、その【法人】とやらであるという証拠を見せろ、と言っても無意味だろう。
    とりとめない話を延々と聞かされるのがオチだ。

    《続く》