思わず頭を抱える。
これは、契約条項に抵触するだろう。
契約書で該当する箇所を探すと、やはり、契約期間中の企業との関わりを禁じる旨が記載されている。
今さらながら、『他企業との接触を契約で禁じる』とは、苦しい就職活動にあえぐあなたにとって、なんと厳しい条件だろう。
だが今はまだ契約前だ。
面接が決まった▲▲社の件の結果が出るまで、締結日を待ってくれないだろうか。
あなたは、ハローワークへ連絡を取ろうと急いで体を起こし、携帯電話に手を伸ばした。
呼び出しのコールを聞きながら、今後のことを考えた。
月曜に行われる▲▲社の面接は1次だ。
だから、その後、役員か社長に会うために、少なくともあと1回は別の日取りで面接がセットされるはず。
もし内定がもらえるとしても、最短で2~3週間後にはなるだろう。
一方、ハローワーク担当官は、現在受付を待っている法人がいるから、契約締結後2週間以内には依頼の連絡をすると言っていた。
そんな状況で、こちらの都合で契約を遅らせてくれとは言いづらいが、就活に関しては融通をきかせてくれるのではないか。なにせ、ハローワークなのだから。
数回のコールの後、電話がつながった。
勢い込んで話そうとしたあなたの勢いが止まった。
業務時間外のアナウンスだ。時刻は18時半。
明日の土曜はちょうど閉庁日で、ハローワークが開いていない。
事情は月曜の朝に話すしかない。