かつてない大波に、あなたの心は躍動した。
すぐに帰って、▲▲社向けに作った応募書類を読み直し、面接でのアピールポイントを整理しておかなくてはならない。
飛び上がるようにストゥールから立ち上がり、カップに残ったコーヒーはそのままにトレイを片付けた。
「ありがとうございます」
店員の声を背中で受けながら、小さな会釈をして喫茶店を飛び出した。
アパートに帰ると、早速パソコンの電源スイッチをオンした。
買ってから6年目を迎え、いい加減くたびれたマシンだ。
なかなか立ち上がらない画面にイラつきながら、あなたは手帳を開き、さっきメモしたアドバイザーからのメッセージを見返していた。
面接の想定問答をイメージして紙に書こうと思ったが、適当な用紙がない。
あなたはバッグから、昨日ハローワークで出力した求人票を引っ張り出した。
今日応募しようとして、結局できなかった3社分のものだ。
頭に浮かんだフレーズが消えないうちにと、求人票の余白に書き込もうとしたとき、ハローワークの担当官が口にした言葉がよみがえった。
『徹底した守秘義務に基づいて、多くの【法人】にお会いいただくことになるので、就職活動で企業と接触することは禁じられます』
あなたの手は止まった。