岩手県株式会社のケース(14)vol.106

どうしてそんな発想をしたかというと、あなたが公務員時代の記憶が頭をよぎったからだ。

官公庁には時々、「こんな素晴らしい技術を開発した」といった連絡が入る。

ディーゼル排気ガスの黒煙を出なくするフィルターとか、廃棄物を有機肥料化する媒体など、新たな発見を告げるものだ。

たいていは小さな企業で、「それを使ったビジネスをしたいのだが」というニーズを抱えている。

たとえその発明が科学的検証で効果有りとされ、商品化まではできても、会社自体のネームバリューが無いので、新発明などは効果を強調すればするほど胡散臭さが先に立つ。

よほど直販向けの上手いやり方を知ってでもいないかぎり、テレビCMなどマスメディアの広告宣伝をばかりを思いつき、結局資金が無いのでそれはできずに呻吟する。

だから、お役所をなんとかうまく利用できないかと相談に来たりするのだ。

今回の岩手社のケースでは、ビジネスを拡張ではなく、むしろ切り捨てるための宣伝展開をしたい。

技術を譲り受けることに、垂涎ものの魅力を感じる演出が欲しい。
譲り受けたニュースに宣伝効果が期待でき、その技術自体にも十分な利益が望める、という旨みを強調したい。

だから宣伝展開は信用ある媒体を使い、それも大規模であることが望ましい。

岩手社の乏しいネームバリューで、ホームページ作成をどれだけ頑張っても効果はない。
舞台を一段と豪華にするためには、大手ビジネス誌が良いと考えたのだ。

『スタビライザー』は、存在すら知られていない新発見とは違う。
話題急上昇の『ビールの指輪』の心臓部を担う技術であり、それは何社もの企業が開発を断ったほどの高いレベルのものだ。

岩手社は無名だとしても、大手ビジネス誌で記事が読まれれば、無名のデメリットは一掃される。

大ヒットの裏側に、下町の工場の高い技術が隠れていることが興味深く、さらにそこには強烈な需要が存在し、儲けの匂いがプンプンしていると告げているのだ。

記事として取り上げる雑誌社、技術を欲しがる企業、双方が「おいしい」と感じるとあなたは思っている。

《続く》

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