青森県株式会社のケース(8)vol.078

あなたの見るところ、社長の追い詰められかたは、かなり末期にきているとの確信がある。

なぜかと言えば、このビジネスを始めるきっかけになった、友人との飲みながらの会話が、この場であなたに一言一句正確に語られたからだ。

これは居酒屋で行われた会話だそうだが、それを【法人】が知っているということは、会話の内容を社内で再現したということになる。

念のため質問してみると、ここ1年ほどの間に14回も繰り返されているという。
あんな他愛のない、実務にも業績にも全く関係ない話が、だ。

社員が新しく入ってきたときは必ず行われ、それ以外でも不定期に繰り返されており、周囲で聞いている社員たちの表現では「年々、脚色が加えられてドラマチックになっている」そうだ。

(年々?)
そこに引っかかったので、ついでにここ3年ほどに期間を広げて聞いてみると、なんと25回繰り返されている。

この一年で前2年を超えるほどの急速の伸びを見せていることがわかる。
やはりあなたの読みは当たっているようだ。
現実逃避が始まっていると見てよい。

「これは運命だから、きっと何とかなる」と自分自身に言い聞かせているようだ。

(創業エピソードがいかに運命的だったか、は、社長の個人的な思いにすぎない)

あなたはそう見ている。
それが社員の共通認識になるほど神話化したいのなら、そのエピソードは現在の『地力』に裏打ちされている必要がある。

北海道株式会社の社長が、父と創業社長が写った写真を、人知れず引き出しの中に飾っているのとは実に対照的だと思った。

青森社に必要なのは、まずは実力だ。
それも、計測可能な実力。

もしくは経営者の人物力、つまり持っている人徳が社員に伝わっていること。
運だけではダメだ。

まず実力が必要だが、今のこの場合は「現時点で実力がないことを素直に認める力」が、その前に必要だ。

コンサルティングっぽくなってきたなと、あなたは感じた。
こういう場合、プロのコンサルタントは打開策の提示や経営者へのコーチングなどを行うのだろう。

舵の取り方を間違えたら会社は沈んでいく状況の中でマーケットを分析し、時代のニーズを読み、生き残るための方策を導き出す。

そして、それを成しうる力と、自社の実力とのギャップを埋める作業をしなくてはならない。

(しかし、社長に何を言うかを考えても意味がない)
あなたの相手は【法人】なのだ。

その【法人】はさらにこう語る。
「契約事務手続きを外注できる会社を探していたときに、システム会社が来て言うんですよね。『今の時代、攻めの飛び道具には事務が有効だから、外注は考え直すべきだ』って」

《続く》

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