青森県株式会社のケース(7)vol.077

そんな理由で、青森県株式会社はこの事業の先駆者でありながら、オペレーションの組み立ては後から参入したどの企業よりも劣っていた。

それでも、『他社にはない○年の実績』『官庁への導入実績』を強調し、競争優位を保つために早々と全国3か所に拠点を展開。

売上は作れたが管理がザルのため会社に利益が残らず、無理という自覚がないまま進めた設備投資は資本構成を直撃した。

70%超を誇った自己資本比率が急速に落ちて回復しないことに焦ってようやく管理体制を築こうとしたが、社長の、ものにこだわらない鷹揚さがここでも足かせになった。

社員は派遣8名を含む25人、パートは6名という体制に膨れ上がってしまったのだ。

なけなしの限界利益は主に人件費と家賃地代で消滅し、忙しくて活気があるように見えるオフィスには、いつしかジリ貧の影が見え隠れし始めていた。

そんな内情を抱えているにもかかわらず急上昇を示したのは、もはや社長の実力というより、時代の流れだった。

家具に限ったことではないが、『持たない価値観』の持ち主が増え、モノを所有するよりも、身軽さや快適さに重点を置く消費傾向に変わった世相の反映なのだろう。

青森県株式会社は、膨れ上がったニーズの中、当初は先覚者として目立つ存在であり、アドバンテージを携えて時代の流れの中でリードを保ってきたが、運頼りだった点が結局はデメリットになった。

地力の弱さが利益面に出始めると、追加投資の回収見込みが危うくなり、無借金経営の誇りは維持できなくなった。

こうなってからいざ融資を頼もうと思っても、それまでは「何とか借りてくれ」と頭を下げてきた銀行も、簡単に首を縦には振ってくれない。

社長の思惑はことごとく外れ、意思決定にも翳りが生じ、社内は何となくギクシャクしている。

心のどこかでそれを自覚しているからこそ「流れは来ている」を連呼している気がする。

あなたが今回【法人】に感じた第一印象は『よくしゃべる』だったが、それは不安を感じている社長の口数の多さを表しているのではないかと思う。

《続く》

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