いっそ、占ってしまえ!(5)vol.046

そして、場数を踏めば踏むほど、あなたは実感する。

(手相そのものの知識より『目の前の依頼人の状況に合わせたトーク』が何より重要なのだ)

それに気づいたのは、20代後半にカウンセリングを学んでからだ。
『共感とノウハウの提供』をメインにして、手相の解説はサブ的な扱いにするほうが効果が高いことに気づき、鑑定技術を向上させた。

以前から、見えた情報をそのまま伝えて解釈はすべて相手任せにするような、粗雑な対応はしないのがあなたのスタイルだったが、そこにカウンセリングやコーチングの要素を加えて質を上げたのだ。

あらゆる情報をコンパクトにまとめはするが、一度に全体を見せず、潜在能力や未来の幸運の存在を強めに表現し、誘導するやり方を、いつしかあなたは身に付けていた。

ただ、オカルト嫌いなあなたは、占いという特技をあまり公表しなかった。
知人の紹介で次々と依頼を受けながらも、一度もプロを目指さなかったのは「こんなことを生業にしては、世間に顔向けができない」という一種の偏見による。

一方、ビジネス現場でデータベースを駆使して他人の業務改善をしたり、相談に乗ることが多かったあなたは、《考え方》より《手段》の提供が問題解決に効果的だと理解していたが、これは占いのコツと全く同じものだった。

だから、【法人】などという茶番に対し一見調子を合わせながら、実際にはあの男自身の運命を占うことで、相談への対応をしてやろうと考えたのだ。

《続く》

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