総合窓口で、担当官を訪ねてきた旨を告げると、すぐに案内された。3日前とは違い、今度案内されたのは応接室だ。
あなたは自分の服装を見下ろし、少したじろいだ。そういえば今日は、改まった契約締結の場だ。
今度はきっと、彼女の上司も同席しているだろう。もう少しまともな格好で来るべきだったかもしれない。
動揺するあなたの内心など知る由もなく、案内の係員はドアをノックして開け、あなたに入室を促した。
遠慮で少し伏し目がちに足を踏み入れ、そっと顔を上げると、担当官が立ち上がってあなたを迎えている。
今日は中間色のパンツスーツだ。
前回はテーブルに隠れて全身は見えなかったが、思っていた以上にほっそりしたスタイルだ。
豊かな黒髪が、スーツの色とのコントラストで、衣装以上に引き立って見える。
彼女はかすかな笑みと共に、あなたに着席を促した。
他には誰もいない。今日も一人なのか。
それも気にはなったが、まずはさっきの電話の件だ。担当官の方から口にしてきた。
「いかがされましたか。面接のほうは」
あなたが断ったことを告げると、担当官はそのことに感謝し、改めてあなたの意思を確認した。
あなたの答えは、言うまでもない。もはや、まな板の鯉だ。
8万円の収入の為に、チャンスをフイにしたのだから。