ハローワークに到着したあなたは、受付機から待合の札を取り、パイプ椅子に腰かけて、自分の番号が表示されるのを待つ。
昨日は求人案件を数件、検索用PCからプリントアウトした。そのうちの3件へ応募する。
このあとは、やはり昨日「しごとセンター」でピックアップした求人4件に応募するために、50分ほど自転車をこいで都心へ向かう予定だ。
電車賃の負担は、大げさでなく家計を圧迫するので、そんな移動手段を余儀なくされている。
平日朝一番のハローワークは、それほど込み合っていない。
だが、一時間以内にフロア内の光景がどう変わるかを、あなたは詳しく知っている。
求人検索用PCがズラリと並ぶ一帯では、表情を失くした利用者たちが機械の前にびっしりと張り付き、一言も発さずに求人情報画面を切り替えて案件を物色している。
失業給付受付窓口の前には長蛇の列ができ、最後尾はかなり離れた距離にある総合受付にまで達する。
失業手当の口座振込申請者の数は、備え付けのイスの数をはるかに上回るので、名前を呼ばれるまで所在なさげにカウンター前のあちこちのスペースにたたずむ人でごった返す。
今あなたがいる就労相談窓口も、あっと言う間に数十人待ちになるはずだが、今日はハローワークへの到着が早かったので、あなたの受付番号札の数字は一ケタだ。
電光掲示の番号表示は、次があなたであることを示している。
……
しばらくの間、3社の募集要項を丹念に見直していたあなたは、ずいぶん待たされていることにようやく気付いた。
電光掲示の番号は、もはや20番台だ。