カテゴリー: 4:まだ遅くない、地力の作り方(青森)

  • 青森県株式会社のケース(13)vol.083

    (むしろ、問題は「撤退時のオペレーション」か)
    借りている事業所用不動産からの退去に伴う手続きは当然だが、他にも問題がある。

    たとえば、現在各拠点で手掛けている仕事を停止させ、本社業務に集約しなければならない。
    混乱する現場の収拾が必要だ。

    地方拠点業務の停止と本社集約。
    これは、口で言うのは簡単だが、実際に動く人間からすれば、簡単に口で言ってくれるなと反論したくなるほど面倒が多いことだ。

    それから当然、その拠点で働く社員をどうするか、だ。
    本社から転勤させた社員は戻ってくる公算が高いが、現地で雇った社員は退職してしまうかもしれない。

    「こう言ってはなんですが、二つの営業所は『営業所』というより『出張所』でしてね。社員同士の会話でも、まあ、のんびりしたもんです」
    【法人】はそう話す。

    (ということは)
    あなたは2拠点の各種伝票データを見た。

    起票者の欄を確認すると、すべて本社の事務員が行っている。

    売上の伸長が止まってからは、現地の事務が減少しており、本社集中制度をもくろんだ社長が意識的に地方拠点の担当事務を本社へ引き上げている。

    それぞれ1名ずつ置いている2拠点の事務員も、本社へ異動させようとしているところだった。

    社員をドライに切り捨てることを考えていないという点で、青森社社長は、あなたが想像した人物像から外れてはいないようだ。

    そんな社長の「人を受け入れる性格」が社内に行き届いているせいなのか、忙しい本社と対照的な地方拠点の社員を見下すような風潮は、【法人】の話からは感じ取れなかった。

  • 青森県株式会社のケース(14)vol.084

    (うーむ)
    別に、あなたの違和感を解消することが、必ずしも青森社の問題解決に役立つとは言えない。

    そんなことより、常識的に考えれば事業縮小という方向性が定まってきたのなら、撤退に関する具体的な方策の検討に取り掛かるのがセオリーのはずだ。

    あなたが考えるべき内容としては、そちらの方が正論だとは思う。

    しかし、【法人】の手相鑑定などというセオリー無視のスタイルを取ったあなたには、セオリーからでは得られない手段でのアプローチこそ重要ではないだろうか。

    (あ……)
    セオリー無視で思い出した。Unknownへのアプローチをすっかり忘れていた。
    あなたは【法人】に、手のひらを差し出すよう促した。

    aomori's hands

    個人 【法人】
    生命線 取引線(売上仕入線)
    運命線 取引先線
    知能線 製品線
    感情線 社員線
    太陽線 市場線
    結婚線 関係線

    (なぜ、こういうことになったのだろう)

    手相は変わっていくものだ。

    たとえ生まれつき不向きなことでも、日々それをしなければならない環境に身を置くと、能力の習得と共に手のひらの状況も変わる。

    どこまでが先天的で、どこからが後天的な変化を遂げたのかわかりづらいが、しばし見入ってしまうほど興味深かった。

    読み解いてストーリーを作るのに、どこから紐解こうかとワクワクする。

    (『社員』に重点を置くのがよかろう)
    しばらく眺めたうえで方針を立てた。

  • 青森県株式会社のケース(15)vol.085

    あなたは一旦手相から意識を離して考えることにした。

    日々の業務が右往左往、業績も右往左往、そして社長も右往左往している心もとない状態の中で、これまで一人の離反者や脱落者が無く、採用した社員が全員残っている事実。

    仕事は大変だし、業績低迷でボーナスは減り、昇給は鈍化しているにもかかわらず、ロイヤリティに変化はないどころか、むしろ増大している気がする。

    ヒマなポジションの社員に対し、多忙な本部社員が変わらぬ親しみと温もりをもって「接し続けている」ことがそれを表していると思う。逆境になるほど結束が強まっているということだ。

    社員たちのそんな様子は、彼らのどんな小さなボヤキやつぶやきまでをも把握している【法人】が証言しているので間違いあるまい。

    (ただ、それだけのロイヤリティがあるなら、ひとりぐらい「なんとか会社の勢いを盛り返そう」と考える人材はいないものか)

    あなたは社員マスタのデータに加え、履歴書の記述まで読み込んでみたが、どうもバリバリのビジネスパーソンといったにおいが感じられる社員はいない。

    (おそらく、自分と一緒に働く人物像として、社長が無意識に選んだ結果がこうなのだろう)

    ガツガツと頑張って儲けるより、のんびりと良い思いができるに越したことはない。
    あくせくと成功を追いかけて全力でつかみとるより、もたらされた幸運を素直に享受できるのが、この社長のスタイルであり、懐の深さなのではないか。

  • 青森県株式会社のケース(16)vol.086

    通常、創業神話と呼ばれるような話はたいていの場合、一神教的な展開を見せる。
    「創業社長の切なる願いを元に、この会社は誕生した」として、創業者を神格化し、畏敬の対象にするようなものが多い。

    しかし、この青森県株式会社の創業神話は明らかに多神教だ。

    日本の古事記において、様々な特徴と個性を持つ神々が織りなす多彩な物語と同様、青森社の神話は社員たちが織りなす多彩な物語になっている。

    あなたは、北海道株式会社には「創業神話を社内に広報する目的で」社内報の発刊を勧めたが、青森県株式会社では、社長のトークがすでにその役割を果たしている。

    あなたは最初、『社長一人が感じている運命の物語などに価値は無い』と決めつけてしまったが、どうもそうではないようだ。
    青森社の社長が語り部であることが、独自の効果を生み出している。

    黄泉の国から高天原へ命からがら帰ってきたイザナギノミコトが、禊払いの時に多くの神々を生み出したように、会社沈没の不安を払拭したい一心で語り部となった青森社社長は、社員を一柱の神々としてこの会社に根付かせた。

    彼らは社長によって、存在自体に価値を見出されているという自信を持つようになっている。
    だからこそ、力も持つが慈愛もあり、他の神の個性を認めて受け入れているかのようだ。
    「フランクな社風」というより「調和のとれた社会」というほうが、相応しい気がする。

    (それなら)
    神話の神々は、それぞれが持つ独自の能力をもって人間界に影響を与えてきた。
    青森社の神々は、社会に影響を与えるような力を持っているか?

  • 青森県株式会社のケース(17)vol.087

    青森社(偶然にも『社(やしろ)』だ)にまします神々は、現代経済の世界で消費者に対し『神レベル的カリスマ』を持っているだろうか?

    識者傾向の社員が多いと手相には表れているが、どれほど高い見識を持っていようが、世間に知れ渡る形で表れていなければ、到底、神レベルにはなれない。

    【法人】に質問してみたが、青森社にメディアが取材に来たのは急成長していた頃のことで、注目ビジネスとして紹介されたときだった。

    しかし、知識や教養的意味で取り上げられたような事実はなく、家具をレンタルで調達する発想と、それをいち早くビジネス化して人気が高まっていることだけが報道された。

    あくまでも会社そのものが取材の対象で、そのときにクローズアップされた社員などはいなかったそうだ。

    マスコミ報道後、一時的に増えた問い合わせの内容も、サービス説明を求めるものがほとんどで、それ以外はレンタルの依頼や、青森社に対する売り込みだけだったという。

    今のところ、あなたが探している「カリスマ社員」については、その事実どころか、それを暗示するものすら姿を見せていない。

  • 青森県株式会社のケース(18)vol.088

    (うーむ)
    ・識者の実力を持ち、消費者の行動を誘引するポテンシャルを秘めている【法人】。
    ・その長所を引き出すカギになり得る最大の要素は『社員(人間力)』。

    あと、ひとつかふたつ、条件が欲しい。検索ワードが少なくて絞り切れないというか、どうもそんな感じだ。

    (「山っ気」「フランク」。つまり、常識の枠にとらわれない形で発想し、行動する傾向か……)
    常識的なアプローチでは見えてこない解答が、どこかにあるはずだ。

    あなたはそう考えながら、PC画面に表示させている青森社のホームページ内をあちこちジャンプする。

    (どうもピンとこない)
    青森社は業界でも指折りの企業だ。
    しかしそれにしては、サイトの内容は非常に地味だ。

    ためしに同業者のサイトを閲覧してみたが、大差はない。
    となると、業種的な傾向なのだろう。

    こういう商売では、ホームページをあまり奇抜にすると、逆に集客効率が落ちるのかもしれない。

    どこも地味な造りだからこそ、こうして比べてみると、<東京オフィス><大阪オフィス>を構えている青森社のサイトのほうが、他社より見栄えがして感じが良いことに気づく。

    (資金負担の問題さえなければ、ふたつの営業所は残しておきたいところだ)
    それが、あなたの直感的な印象だった。