カテゴリー: 4:まだ遅くない、地力の作り方(青森)

  • 青森県株式会社のケース(7)vol.077

    そんな理由で、青森県株式会社はこの事業の先駆者でありながら、オペレーションの組み立ては後から参入したどの企業よりも劣っていた。

    それでも、『他社にはない○年の実績』『官庁への導入実績』を強調し、競争優位を保つために早々と全国3か所に拠点を展開。

    売上は作れたが管理がザルのため会社に利益が残らず、無理という自覚がないまま進めた設備投資は資本構成を直撃した。

    70%超を誇った自己資本比率が急速に落ちて回復しないことに焦ってようやく管理体制を築こうとしたが、社長の、ものにこだわらない鷹揚さがここでも足かせになった。

    社員は派遣8名を含む25人、パートは6名という体制に膨れ上がってしまったのだ。

    なけなしの限界利益は主に人件費と家賃地代で消滅し、忙しくて活気があるように見えるオフィスには、いつしかジリ貧の影が見え隠れし始めていた。

    そんな内情を抱えているにもかかわらず急上昇を示したのは、もはや社長の実力というより、時代の流れだった。

    家具に限ったことではないが、『持たない価値観』の持ち主が増え、モノを所有するよりも、身軽さや快適さに重点を置く消費傾向に変わった世相の反映なのだろう。

     

    青森県株式会社は、膨れ上がったニーズの中、当初は先覚者として目立つ存在であり、アドバンテージを携えて時代の流れの中でリードを保ってきたが、運頼りだった点が結局はデメリットになった。

    地力の弱さが利益面に出始めると、追加投資の回収見込みが危うくなり、無借金経営の誇りは維持できなくなった。

    こうなってからいざ融資を頼もうと思っても、それまでは「何とか借りてくれ」と頭を下げてきた銀行も、簡単に首を縦には振ってくれない。

    社長の思惑はことごとく外れ、意思決定にも翳りが生じ、社内は何となくギクシャクしている。

    心のどこかでそれを自覚しているからこそ「流れは来ている」を連呼している気がする。

    あなたが今回【法人】に感じた第一印象は『よくしゃべる』だったが、それは不安を感じている社長の口数の多さを表しているのではないかと思う。

    《続く》

  • 青森県株式会社のケース(8)vol.078

    あなたの見るところ、社長の追い詰められかたは、かなり末期にきているとの確信がある。

    なぜかと言えば、このビジネスを始めるきっかけになった、友人との飲みながらの会話が、この場であなたに一言一句正確に語られたからだ。

    これは居酒屋で行われた会話だそうだが、それを【法人】が知っているということは、会話の内容を社内で再現したということになる。

    念のため質問してみると、ここ1年ほどの間に14回も繰り返されているという。
    あんな他愛のない、実務にも業績にも全く関係ない話が、だ。

    社員が新しく入ってきたときは必ず行われ、それ以外でも不定期に繰り返されており、周囲で聞いている社員たちの表現では「年々、脚色が加えられてドラマチックになっている」そうだ。

    (年々?)
    そこに引っかかったので、ついでにここ3年ほどに期間を広げて聞いてみると、なんと25回繰り返されている。

    この一年で前2年を超えるほどの急速の伸びを見せていることがわかる。
    やはりあなたの読みは当たっているようだ。
    現実逃避が始まっていると見てよい。

    「これは運命だから、きっと何とかなる」と自分自身に言い聞かせているようだ。

     

    (創業エピソードがいかに運命的だったか、は、社長の個人的な思いにすぎない)

    あなたはそう見ている。
    それが社員の共通認識になるほど神話化したいのなら、そのエピソードは現在の『地力』に裏打ちされている必要がある。

    北海道株式会社の社長が、父と創業社長が写った写真を、人知れず引き出しの中に飾っているのとは実に対照的だと思った。

    青森社に必要なのは、まずは実力だ。
    それも、計測可能な実力。

    もしくは経営者の人物力、つまり持っている人徳が社員に伝わっていること。
    運だけではダメだ。

    まず実力が必要だが、今のこの場合は「現時点で実力がないことを素直に認める力」が、その前に必要だ。

    コンサルティングっぽくなってきたなと、あなたは感じた。
    こういう場合、プロのコンサルタントは打開策の提示や経営者へのコーチングなどを行うのだろう。

    舵の取り方を間違えたら会社は沈んでいく状況の中でマーケットを分析し、時代のニーズを読み、生き残るための方策を導き出す。

    そして、それを成しうる力と、自社の実力とのギャップを埋める作業をしなくてはならない。

    (しかし、社長に何を言うかを考えても意味がない)
    あなたの相手は【法人】なのだ。

    その【法人】はさらにこう語る。
    「契約事務手続きを外注できる会社を探していたときに、システム会社が来て言うんですよね。『今の時代、攻めの飛び道具には事務が有効だから、外注は考え直すべきだ』って」

    《続く》

  • 青森県株式会社のケース(9)vol.079

    (また、システム会社か)
    毎度おなじみになりつつある展開だ。

    いつも思うが、時期と内容さえ間違っていなければ、彼らの言うことは常にまともだ。
    コンセプトが明快で、事業サポート用アイテムの売り込み文句として申し分ない。

    問題は、システム導入を検討している顧客側(それも作業現場の末端)の状況が、システムの機能説明のお手本どおりになっていないという点だ。

    当然どの会社の現場でも、システム概要の紹介資料みたいな、教科書どおりの使い方では役に立たない。

    その点は、機能のカスタマイズや業務改善のソリューションでシステム会社がカバーすることになるのだが、顧客側も自分の弱点や要望に気づけないので、具体的に何を満たしてほしいのかを言わないことが多く、ましてや部外者であるシステム会社からは、いかに穿っても見えないことはよくある。

    そもそも、そういった会議に出てくる顧客側の出席者は、現場から報告を受けただけで『現場感覚が無い立場の人間』であることが多く、自分たちの会社に必要な具体的機能をイメージできないから、ピントのずれた発言しかできないというケースが多発している。

     

    仮に、現場の末端で作業を担当しているスタッフが呼ばれて出席したとする。

    慣れない会議室にズラリと並ぶお偉方と、神妙な顔つきで並ぶシステム会社の面々に囲まれることになる。
    改まった空気の中で、緊張しないほうがおかしい。

    システム会社を呼びつけているのは自社のほうなのだが、彼らのことがお客様にしか思えない。
    自社の幹部も大勢見守る中で、現場の問題点を堂々と発言する勇気など、無いのが当然だ。

    当たり障りのないことを控えめに言うのが精いっぱいで、それだけで発言時間は終了する。
    当然、本当の問題は問題点としては認識されない。
    それどころか「おおむね上手くいっている」という印象を残す。

    幹部たちの出す、その安堵の空気感が、対坐するシステム会社のメンバーに伝わると、ある意味その時点で落としどころが決定されてしまう。

    本当は、問題は山積みなのだが、自社側とシステム会社側のどちらからも根本的なところは見えないまま、システム導入が進むことになるのだ。

    まさに『ジョハリの窓』の4の領域(自他ともに認識できないunknown)だ。

    unknown-houjin

    あなたが関わった前の【法人】たちは、たまたまその“領域4(unknown)”に解決のポイントがあって、そこにアプローチしたあなたに多額の報酬がもたらされる結果になった。

    いま、青森県株式会社を訪れているシステム会社はどういう方法でアプローチしようとしているのか?

    《続く》

  • 青森県株式会社のケース(10)vol.080

    『攻めの飛び道具には、事務が有効』といったシステム会社の営業の言葉が、具体的にどんなことを指しているのかはわからないが、ある程度想像はつく。

    例えばルート営業で食料品や資材などを納めている卸の会社などでは、「無くなりそうなタイミングで顧客に声をかける」といったアクションが高い満足を生むことがある。

    そういう企業努力によって、既存顧客とのより良い関係を築き、その口コミが新規顧客獲得につながることも期待できる。

    つまり、顧客獲得の手段を、営業担当者の直接的な接触だけに頼るのではなく、後方で事務を担当しているメンバーが、自身の業務の特性を生かしたスタイル(例えば各顧客の消費速度と前回納品日からの経過日数のリストを基にしたアプローチ)で間接的な営業に参画する。

    『攻めの飛び道具』とはそんな意味ではないだろうか。

    上に挙げた例は通常、顧客対応履歴を持っている営業事務の領域だが、売上伝票でも確認できる実績データを基にしているので、経理がその『飛び道具』の役回りを兼ねることも理論上は可能だ。

    しかし、ある程度大きな企業では「経理は管理部門、営業事務は営業部門」と分断されることが多く、経理が兼務する形はほぼ見られない。

    一方、小さな会社では総務と経理が兼務になっているケースが多く、営業サポートをそこまできめ細かくやり遂げるのは難しい。

  • 青森県株式会社のケース(11)vol.081

    あなたは、この局面から先の展開をいくつか思い浮かべてみた。

    1.「自社事業のカギを握るメイン業務」を、これから探そうとしている得体のしれない外注先ではなく「親身な我が社」に委ねさせるよう誘導し、事実上青森社の首根っこをつかんでしまう。

    2.「自社事業のカギを握るメイン業務」だけでなく、オペレーション全般を見直すためコンサルタントを入れて本格的に青森社の革新を図る。
    これは青森社の株式上場を狙ったベンチャーキャピタルで、システム導入はその要素のひとつとして準備されている。

    3.「自社事業のカギを握るメイン業務」を理想的な形に進化させるプロジェクトの音頭を取り、青森社の経営健全化を成功させる。
    その暁に、そこまでに築いた合理的なパターンを搭載したシステムの購入という運びになる。

    1は完全に期待外れ。
    2は経営者の質や事業の性格によっては「有り」だが、今までの話から総合すると、青森社には適さないだろう。

    3はビジネスというより慈善事業だ。
    いくら相手が親身に話してくれたとはいえ、そこまでは望むべくもない理想の夢物語だ。

  • 青森県株式会社のケース(12)vol.082

    (成長期なら、それもいいだろう)
    成長期は、顧客の数が増える時期だ。

    客は、その商品やサービスが欲しいので、買うこと自体はほぼ決定している。
    あとは、どこから買うかという選択だけが残された状態にある。

    だから成長期は「今売れている商品を売ればよい時期」であり、「顕在顧客に最もスピーディーに到達する競争の時期」とも言い換えられる。
    同じ業態で株式公開している企業が無いなら、上場することもまた有利な条件を持つ要因になることだろう。

    (しかし、残念ながら今は成熟期だ)
    成熟期に上場するということがどんなことか、青森社の社長には念頭にないと思うし、システム会社の営業がそこまで懇切丁寧に話すだろうか。

    「今売れている商品を売ればよい成長期」とは違い、成熟期は「次のヒット商品を出さなければいけない時期」だ。
    売上や利益が上昇しなければ投資家に対するアピールが弱くなり、株の売買では売りが先行して株価は下落するというリスクがある。

    その防止策についての助言をしているかどうかということだ。