【法人】現る!(1)vol.034

地下4階。
面談の現場は、非日常な場所だった。
そんなに低い階層へ足を踏み入れるのは、霞が関勤務の頃以来かもしれない。
ハローワークの中にも、そこへ行きつけるエレベーターは1基しかない。

カードキーでロックを通過し、エレベーターの前に立った。
キーは数日前、あなたの自宅に書留で届いた。
ハローワークでも限られた職員しか持っていないため、当日忘れてこないよう注意されている。

大げさな道具立てだ。
これも「守秘義務」のためか。
しかし、たかがコンサルにここまでの大仕掛けが必要だろうか。
役所は特別だからと、役人が片意地を張っているのか。
そうだとしても、さすがにこれは度が過ぎていると思う。

ただ、労働基準局が相談を受け付ける部屋は、入室するために扉を二つ抜けるそうだから、同じようなシチュエーションを検討した結果、こんな特別室が準備されたのかもしれない。

そうでないとしたら、それこそあなたが恐れているように、暴力の現場を隠ぺいする舞台装置の可能性も否定できない。

エレベーターの扉が開いても、あなたは外へ出ず、周囲の気配に耳を澄ませた。

《続く》

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