「現在、相談を希望している【法人】がたくさんありますので、本日の契約締結後、直ちに受付の選定作業にかからなくてはならないのです」
8時半に、後ろめたい気持ちで恐る恐るかけた電話。
担当官の声は、あなたの虫の良い考えを、早々に打ち砕いた。
「先週お話ししたことですが、今回、欠員が出たための依頼ですので、もしお断りになると分かれば、すぐに別の候補者をあたらなければなりません」
その場での決断を迫られた。最も恐れていたことだ。
あなたの生活が、そして人生がかかったこの決断を、それこそ断腸の思いでしなければならない。
しかも、早急にだ。
沈黙するあなたに、担当官の声がさらに追い打ちをかけた。
「このあと午前中に面接をお受けになっても、午後にハローワークとの契約を締結したら、速やかにそちらの会社へ辞退を申し入れて頂かなくてはなりません」
(……)
それでは、▲▲社の面接を受ける意味がない。
やはり、ハローワークの依頼を断るべきだろう。
あなたは受話器を握りしめ、ゆっくりと息を吸い込んだ。