カテゴリー: 1:コンサルタントになりませんか?

  • 就活禁止? 低賃金コンサルタントへのいざない(6)vol.013

    だが、次の担当官の言葉は、あなたの思惑とは全く違ったものだった。

    「実は今、私どもハローワーク【法人】部門からの依頼を受けてくださる方に欠員ができて、新たな人材を探しているのです」
    就職支援ではなく、IT関連での業務委託ということか?
    ハローワークで就職支援事業に関するデータマイニングでもしていて、その業務を任せたいということか?

    だが、それならもっと適役がいるはずだ。
    データマイニングには統計学的な要素が必要なはずだが、あなたの経歴とは縁がない。
    だから、任されてもできるとは思えないが、ここは是が非でもできると主張して仕事を得たいところだ。

    「不定期なご依頼になります」
    と担当官は言う。

    あなたの心はぐらついた。
    それでは生活費を賄えないかもしれない。

    「そしてこれが重要なのですが、私どもとの契約期間中は、求人案件に応募することはできません」

    あり得ない。
    あなたは絶望した。

    断ろうと思ったが、もう少しだけ話を聞いてみようと思った。
    救人案件への応募を禁止するほどなら、それなりのリターンがあってもいい。

    「生活のための就業の機会を、ハローワークの都合で制限してしまうからには、それなりの収入条件は提示させていただきます。まずは、説明をお聞きになったうえでご判断ください」

    『それなりの収入条件』という言葉に惹かれながら、あなたは彼女の次の言葉を待った。

    《続く》

  • 就活禁止? 低賃金コンサルタントへのいざない(7)vol.014

    「徹底した守秘義務に基づいて、多くの【法人】にお会いいただくことになるので、就職活動で企業と接触することは禁じられます」

    (?)
    当然あなたはあっけにとられる。

    (……一体、何の話が始まるのか?)

    「もし、私どもからの申し出に同意いただけた場合、最初に依頼者とお会いになった後、評価測定を行わせていただきます」
    見当もつかない展開に、あなたが発すべき言葉は何もない。
    担当官の言葉は続く。

    「ハローワークから依頼者にインタビューし、ヒアリング内容を部内で協議した結果、継続してお願いする決定が出れば、本契約を交わすことになります」
    要するに、まずは1回限りの契約を結び、ダメな場合はそのまま契約終了ということか。

    IT活用に関する調査と相談受付とか、そんなことか?
    経営コンサルタントも、分野によって細分化されている。

    あなたはよく知らないが、『ITコンサルタント』なんてのも、巷にはあるのかもしれない。
    それのハローワーク版といったところか。

    でもなぜ、自分に白羽の矢が立ったか?
    元公務員という理由ではないと思うが。

    そのあと、担当官の説明は理路整然と続いた。
    結局のところ、「調査し、解決手段を講じ、相手に投与する」とのこと。

    あなたの発言を採用するしないは相談企業の責任。
    それによって損害が生じたとしても、やはり相談企業の責任。
    あなたが負うのは、見当違いな解釈をした場合の相談企業からの評価下落だ。
    そうなればその後の依頼は減少し、あなたとハローワークの契約解除の可能性があるという内容だった。

    予想どおり、ハローワークのお抱えコンサルタントか。
    厚生労働省の天下りOBがふんぞり返っていそうなポジションだが、お飾りでは務まらないと判断されたのか。

    (次カテゴリー『好条件に飛びつけるか?』へ続く)

  • 皮肉な「書類選考通過」!二股の誘惑?(1)vol.015

    あなたは契約書を手に、アパートへの道を歩いていた。

    時刻はまだ正午前だ。
    バッグの中には、ハローワークの担当官から受け取った契約書が入っている。
    これに署名捺印して来週月曜日に提出すれば、同日付で処理され、仮契約が成立する。

    しばらく歩くと繁華街に差し掛かり、連れ立って歩くスーツ姿が、あちこちに目立ち始めた。
    昼休みの食事のために外出した勤め人たちだ。
    何となく浮き浮きした感じの人が多いなと思い、ふと今日が金曜日だったことに気づく。

    退職後のあなたは、切迫感に追われて曜日の感覚がなかったが、今日は久しぶりに安らいだ週末を迎えられそうだ。

    念願の『雇用契約書』というわけにはいかなかったが、あなたに労働対価をもたらしてくれる『業務委託契約書』を手に入れたのだ。
    たった1回きりのものだが。

    (喫茶店へ行こう)
    金曜日の力が、あなたをそんな気にさせたのかもしれない。
    曲がりなりにも仕事が与えられそうだからでもあるが、何よりあなたが『スカウト』された喜びと実感は、何物にも代えがたい。

    転職市場で一切認められなかったあなたに、相手から声がかかったのだ。

    たくさんの登録者に届く、まったくあてにならない「オープンオファー」でもなければ、それと何の違いがあるのか、あなたにはさっぱりわからない「興味通知オファー」でもない。

    面接確定のはずの「プライベートオファー」で、面接前に断られたことさえある。
    想定外の応募数に泡を喰った人事担当からの謝罪文と共に。

    苦い経験ばかりの中、今回はたったひとり、あなたにだけ声をかけられ、契約も成立寸前だ。

    祝杯をあげたくもなる。
    それに、法人の誰と対面するかわからないが、どんな話にも高いクオリティで対応し、一回限りのチャンスを、今後も継続していくためのプランが必要だ。

    空気の澱んだあなたの部屋は、どう考えてもそれを考える場にはふさわしくない。
    貧乏暮らしに外食は厳禁だったが、そんな事情で今日のあなたは喫茶店へ足を向けた。

    《続く》

  • 皮肉な「書類選考通過」!二股の誘惑?(2)vol.016

    繁華街のカフェは、どこも満員だった。
    ランチタイムに続いて、ティータイムもきっと混むだろう。
    時間をつぶすため、いつもの道を外れて、少し遠回りな川沿いの道をゆっくりと歩き、夕方近くにようやくカフェに入店した。
    昼食を摂っていないので空腹だったが、サンドイッチのセットは高いのでホットドッグとコーヒーにした。

    出入り口に一番近いストゥール席を選び、コーヒーを乗せたトレイをテーブルに置いた。
    通りを歩く人たちの姿に気を紛らわせながら、煮詰まりそうな思考を丁寧に進めたい。

    ホットドッグが出来上がったので、カウンターまで取りに行く。
    斜め半分にカットされたコッペパンに、ソーセージが挟まっている。
    小さく噛みちぎって、ゆっくりと念入りに咀嚼する。
    節約生活で、少量の食事を余儀なくされるときの鉄則だ。
    こんなひもじい食事に別れを告げられる日はやってくるのだろうか。

    小腹を満たしたあなたは、コーヒーを一口飲み、本格的に考え始めた。
    先刻、ハローワークの担当官が口にした、いくつかのポイントを思い返す。

    ・ITエンジニアとの連携を重視する経営者がたくさんいる
    ・経営者と事業について語り合えるエンジニアは多くない
    ・あなたが依頼されるのは、調査し、解決手段を講じ、相手に投与すること

    ITそのものの従事者になれという話はなかった。
    そんな話なら、素人のあなたに白羽の矢は立たないだろう。
    なにしろ “ 10年戦士 ” の技術者は、掃いて捨てるほどいるのだから。

    《続く》

  • 皮肉な「書類選考通過」!二股の誘惑?(3)vol.017

    (求められているものは何か)
    ITの専門知識や技能はいらないということは確認した。

    まずは、相手から問題点を引き出すことだ。
    どの部署の人と会うのかは分からないが、まず話を聞いたうえで、あなたのプランを伝え、どんな形で関わるかを決めていけばよい。

    【ITによる情報資産の活用技術】
    それが、あなたが提供したいコンセプトだ。
    しかし、そこに至るまでに絶対的な必須条件は、技術ではなく人間関係なのだ。

    IT技術そのものではないという点がポイントだ。
    それは後から調達できるということを、あなたは経験から学んだ。

    情報資産の活用技術は、IT技術だけでは得られない。
    IT技術に人間関係力を掛け合わせて、初めて得られるのだ。

    まずはその見通しが立たないと、成功はほぼ見込めない。

    相談者と向き合った時のイメージが、あなたの頭の中で、徐々に形になってくる
    集中していて気づかなかったが、気が付くとずいぶん時間が立っていた。

    《続く》

  • 皮肉な「書類選考通過」!二股の誘惑?(4)vol.018

    店の時計を見上げたきっかけは、バッグの中で振動している携帯電話だった。
    表示を見ると、しごとセンターのアドバイザーからだ。

    (こんな大事なときに・・)
    イヤな相手の横やりを迷惑に感じながら、あなたは電話に出た。

    「先週応募された▲▲社から、急きょ面接に来てほしいとお話がありました」
    あなたは仰天した。
    ▲▲社とは、今、あなたが応募している企業の中で、最も魅力を感じている会社だ。

    「メールでも送りましたが、先方の面接希望日が月曜日なので、早めにお知らせしようと思って念のためお電話しました」
    あなたはあわてて手帳のページをめくり、アドバイザーの話を書き留める。
    さっきまでメモしていた相談受付のイメージは、一瞬で頭から消し飛んだ。

    「メールのほうに詳細を書いてありますので、確認して当日までにご準備ください」
    そう言って、アドバイザーは通話を終了した。

    (ノッてきたか)
    複数の会社から同時に内定をもらう話は、就職支援セミナーで毎回のように聞かされたが、あなたにとっては現実感のない、おとぎ話にしか思えなかった。

    しかし、とうとう自分にも、そんな状況が訪れてきたような気がする。
    アドバイザーは、あなたの職歴の中の、官庁に関する経験が先方の担当者に評価されたと言っていた。
    あなたが地方の出先機関で、事務の責任者だった時の記述を読み『特に会ってみたい』 と言ったそうだ。

    応募書類添削セミナーで「効果的なエピソードのはさみ方」を教わったが、その効果がようやく芽を吹いたのだろう。

    《続く》