カテゴリー:  「受け負け」な請負

  • 就活禁止? 低賃金コンサルタントへのいざない(1)vol.008

    担当官はあなたに問いかける。
    「長所面と短所面、どちらのエピソードにも、 頻繁に出てくる事柄がありましたね。覚えていらっしゃいますか?」

    (データベースのことだろうか)
    たしか社会人3年目の人事異動で、22歳のあなたは前任者から膨大な作業を引き継いだ。
    当然ながら、下っ端のあなたには、作業を分担させられる部下などはいない。
    部下の代わりにできるのはパソコンだけだ。

    そのときに、パソコンを作業人員の代替と考えず、パソコンの中に組織を構築しようとした点が、その後のあなたの人生を変えたといっても過言ではない。

    その目的のためにデータベースソフトを使い、パソコンの腕前は上がったが、プログラマーなどの技術系は目指すことなく、データベースでの組織作りに強い関心を持った。

    つまり、『システム化』だ。
    しかし技術系ではないため、あなたがしたことといえば、他人に働きかけて自分も混ざり、作業工程や担当者間連携などの決まり事を変更し、まずは実務面を合理化することだった。

    そしてそれを補完するのがパソコン(主としてデータベース)だった。

    これをいくつもの職場で実践してみて思ったのは、官庁も民間も関係ないということだった。

    「部署をまたがる横断」だとか「現場実務とシステムの関連付け」など、経営陣が頭を悩ます問題は、データベースを触媒に使うと、意外なほど容易に実現できる。
    サーバーの中には、宝物が埋まっている。

    《続く》

  • 就活禁止? 低賃金コンサルタントへのいざない(2)vol.009

    しかし、なぜか誰もがこんなにも価値を生む「データベース活用」に手を付けない。
    だから、企画も実行もあなたの独壇場だった。

    こういったことを、応募書類作成セミナーで書いてみたのだ。

    「私どもでは、この点にとても関心を持ちました」
    担当官の言葉にあなたは引き込まれた。
    こんなことを言われたのは初めてだったからだ。

    あなたの独壇場だったデータベース活用は、就活の自己アピール度が弱い。
    ライバルがいないため競ったエピソードがなく、その成果も金銭の価格では示せないからだ。

    応募書類でこのスキルを一言で表現する適当な名称がないことが、あなたにとって最大級の悩みだった。

    そんな中、目の前のハローワーク職員はあなたの技能にとても関心を持ったという。

    そしてさらにこんなことを言う。
    「経営者の中には、ITで自社事業の強みを増すために、ITエンジニアとの自在なコミュニケーションを取りたがる人がたくさんいます」

    (それは良くわかる)
    あなたは、かつて自分が勤めた人材会社の社長もそう言っていたことを思い出し、担当官にうなずいた。

    「ご存じかもしれませんが、残念なことに、経営者と会社の事業そのものを語りあって、社長さんを満足させられるエンジニアは多くないのです」

    (それもそうだろうな)
    あなたは実感と共にうなずく。
    社長が、朝礼でボヤくように言っていた。

    『連中は宇宙語で話すから、会話にならない』 と。
    『そして、こっちの言うことを理解できないから、訊いてることに回答してこない』とも言った。

    ボヤキではあるが、何度も繰り返すのはそれだけ期待も大きいということだ。経営者の、情報活用へのニーズが高いことがうかがえる。

    《続く》

  • 就活禁止? 低賃金コンサルタントへのいざない(3)vol.010

    扱いづらいITエンジニアに苦労する経営者に共感する一方、あなたは、何人ものエンジニアと接してきた経験から、彼らにも同情できる。

    そもそもシステムというやつは「それを人間がやっていたら効率が悪いこと」を自動化する仕組みのことだ。
    難易度はまちまちだが、いずれにしても「一定の繰り返し作業を機械にさせる仕組づくり」の専門家がITエンジニアだ。

    だから、経営者が夢想する『自動化による自社事業の将来構想』みたいな漠然としたことを言われても、それは『設計図』とは似ても似つかぬものだ。

    「あの連中は、ビジネスってものがわからないんだ」
    と経営者はブツブツ言うが、それはIT技術を経営者側から見ているからだ。
    エンジニアだってビジネス上の自分の役割はしっかりと果たしている…と、あなたは考えている。

    融通の利かないコンピュータ相手に奮闘するITエンジニアにとって、経営者的発想は全くの別分野だ。
    そういういわば『漠然とした話』は不得意なのだ。まず要件定義して仕様書におとしてから関わりたい。

    だから、『会社事業そのものを語りあえるエンジニアが欲しい』という経営者の願いは、無いものねだりになることがほとんどなのだ。

    エンジニアの技能でなんでもやろうとすることをやめ、『社内の情報資源活用』というテーマで発想することにより、経営者の願いはかなえられるとあなたは考えている。

    《続く》

  • 就活禁止? 低賃金コンサルタントへのいざない(4)vol.011

    偶然だがあなたは、『IT資産を活かした部署の機能強化』に関心を持ち、個人的にではあるが、一般的に経営者が望む戦力強化を社内で画策してきた。

    今の作業をスムーズにシステム化できるよう現場を誘導し、仕様を明確化した分だけエンジニアには要求水準を上げたが、それでも大概望みどおりになった。

    現場とエンジニアが歩み寄ることに成功すると、想像以上の成果が実現できるのだ。

    「そこはシステムがからむから、システム室じゃないとわからん」
    「いや、そこは作業現場で決めてもらわないと」
    という押し付け合いを防ぐだけで、データベースは莫大な価値を生む。

    これを数多く行ってきたあなたは、当然この技能が就活に役立つと考えてきたが、ハローワークの応募書類作成セミナーをきっかけに、それは逆転しつつある。

    端的な表現方法が無く、職務経歴書の読み手が想像しづらい特技なら、いっそ経歴から抹殺したほうが良いのではないか?

    そう考えて、思い切ってこの最大のアピールポイントを職務経歴書から消そうとしていた矢先だっただけに、今向かい合っているハローワークの担当官からの言葉は、あなたに突き刺さった。

    でももし、この流れで彼女が
    『是非その経験を活かして、フランチャイズ経営を』とか、
    『水と油の両者を理解する能力のある方なら、きっとうまくいきます』
    とか言われたら、幻滅もいいところだ。

    《続く》

  • 就活禁止? 低賃金コンサルタントへのいざない(5)vol.012

    いや、もしかするとフランチャイズ勧誘ではなく『技術職への転換の打診』ということも有り得る。

    「今後、ITエンジニア求人で適当なものがあった場合、ハローワークから連絡します」 といったふうな。
    むしろ、その可能性が高い気がする。

    就職に焦り、先行きの見通しが立たない今、そんなシフトチェンジも有りかもしれない。
    とはいっても結局、応募の範囲が広がるにすぎないので、その後はいつも通りの苦戦になるだろう。
    それでも一応、ハローワークの「○○支援」といった扱いで、採用した企業側には補助金が出るとか、気休め程度の効果はあるはずだ。

    (だが……)
    この年齢から、ITエンジニアなんて務まるか?
    近い将来、老眼や四十肩、節々の痛みなど、体のあちこちに陰りが生じる年齢になってゆくのだ。
    過去に経験があるならともかく、今さらプログラマーやシステムエンジニアに初挑戦するのはさすがに無理ではないか?

    (うーむ……)
    このままアルバイトに毛が生えた程度の収入でジリ貧となるか、思い切って職種転換して無理して体を壊しジリ貧となるか、そんな悲観的な2択をせざるを得ないかもしれない。

    しかし、心のどこかから別の声がして、あなたに方向転換を告げた。

    (エンジニアへの転換でもいい)
    今度はそっち側から、あなたなりのデータベース技術にトライしてみよう。
    そう思って、担当官の顔を、決意のこもった眼差しでじっと見た。

    《続く》

  • 就活禁止? 低賃金コンサルタントへのいざない(6)vol.013

    だが、次の担当官の言葉は、あなたの思惑とは全く違ったものだった。

    「実は今、私どもハローワーク【法人】部門からの依頼を受けてくださる方に欠員ができて、新たな人材を探しているのです」
    就職支援ではなく、IT関連での業務委託ということか?
    ハローワークで就職支援事業に関するデータマイニングでもしていて、その業務を任せたいということか?

    だが、それならもっと適役がいるはずだ。
    データマイニングには統計学的な要素が必要なはずだが、あなたの経歴とは縁がない。
    だから、任されてもできるとは思えないが、ここは是が非でもできると主張して仕事を得たいところだ。

    「不定期なご依頼になります」
    と担当官は言う。

    あなたの心はぐらついた。
    それでは生活費を賄えないかもしれない。

    「そしてこれが重要なのですが、私どもとの契約期間中は、求人案件に応募することはできません」

    あり得ない。
    あなたは絶望した。

    断ろうと思ったが、もう少しだけ話を聞いてみようと思った。
    救人案件への応募を禁止するほどなら、それなりのリターンがあってもいい。

    「生活のための就業の機会を、ハローワークの都合で制限してしまうからには、それなりの収入条件は提示させていただきます。まずは、説明をお聞きになったうえでご判断ください」

    『それなりの収入条件』という言葉に惹かれながら、あなたは彼女の次の言葉を待った。

    《続く》