カテゴリー:  好条件に飛びつけるか?

  • 皮肉な「書類選考通過」!二股の誘惑?(7)vol.021

    ハローワークとの契約は、不定期/不自由/収入額不明瞭。
    この3要素が、前向きな気持ちでの締結をためらわせる理由だ。

    しかし、継続契約の可能性があり、少ないが確かな収入が見込まれる話に対し、▲▲社の話は当然不採用に終わることもあり得る。

    だが、▲▲社の人事担当者は、官庁経験の中でもあなたが秘かな自信と誇りを感じている「出先機関の事務責任者の経歴」にフォーカスし、高く評価してくれているらしい。
    こんなことは初めてだ。

    (今度こそ、うまくいくのではないか?)
    正解のない堂々巡りを繰り返す中で、こんな考えも浮かぶ。

    (▲▲社は、しごとセンターの案件だ)
    ハローワークへは、このことを隠しておいて、まずは面接を受けてしまうことが可能だ。
    可能性はできるだけ確保しておくという考え方だってあるだろう。
    生活がかかっているのだから。

    (いや、しかし・・)
    徹底した守秘義務のもとで委託業務に従事する契約者の行動は、ハローワークで徹底的に調べられるかもしれない。

    (やはり、契約日の先送りを打診しよう)
    たったふたつの話を受けただけで、こうも振り回される我が身が不甲斐ない。
    が、あなたとしては、そのほうがすっきりして面接に臨める。
    普通の求人とは違うのだ。仕方がない。

    とはいえ、せっかくのチャンスを、正体不明のオファーと天秤にかけることが、あなたの人生にとって、正しいことなのだろうか?
    結局、伸びやかな金曜日は、あなたには訪れなかった。

    《続く》

  • 皮肉な「書類選考通過」!二股の誘惑?(8)vol.022

    『起業支援の【法人】受付部門』
    これについて調べようと思いついたのは、土曜日の朝だった。

    昨日あなたと会ったあの若い女性担当官は、自分はそこの担当者だと名乗った。
    しかし、ハローワークのホームページをいくら探しても、そんな部門はない。
    起業支援活動のページから探しても、それらしき情報は見当たらない。

    「生活のための就業の機会を、ハローワークの都合で制限してしまうからには、それなりの収入条件は提示させていただきます」
    彼女はたしかにそう言った。

    具体的には、どういうことなのだろうか?

    契約書には「最低限度額として、本契約の締結日から起算して、【法人】への対応後、評価測定協議の最終日までの日数(勤務を要しない日を含む)に、直前に受給した失業給付の日額相当を乗じた金額を支給する」 と書いてある。

    読み取りづらい条文だが、元公務員のあなたにとってはありふれた文章だ。
    難易度としてはむしろ序の口レベルだ。

    担当官によれば、2週間以内に相談を受けるそうだから、仮に14日間とすれば、その間に8万円前後の収入が期待できる。
    その間、就職活動をしてはならないという点が、通常の失業給付と正反対な特徴だ。

    しかし、「それなりの収入条件」と担当官は言ったが、これではまともな暮らしができそうにない。

    何よりもまず、普通の勤め人だった頃に借りたこのアパートの家賃負担は大きすぎる。しょぼい部屋でさほど高くない部屋代だが、ハローワークが提示している低賃金ではそれすらも払うことがままならないだろう。

    とはいっても、敷金・礼金・仲介手数料・火災保険料・引っ越し費用などを捻出できない。
    ハローワークの役人は、きっとこの事情を理解してくれないだろう。

    《続く》

  • 皮肉な「書類選考通過」!二股の誘惑?(9)vol.023

    あるいは、契約書の【最低限度額】という文言に、救われる要素を見いだせるのではないか。
    何らかの条件を満たすことで、収入アップが可能なのかもしれない。

    さらに契約書の但し書きを見ると、「別途報酬等が支払われる場合において、その金額が最低限度額を上回る場合、最低限度額の計算による支給は行われないものとする」とある。

    最低限度額とはあくまでも補償されるものだ。
    たとえば14日間の契約期間中に、なんらかの形で6万円の報酬を、企業またはハローワークから受け取ったとする。

    その場合、あなたは2万円の補償を受けて所定の8万円を手にすることができる仕組みが【最低限度額】だ。

    だから、受けた報酬が10万円だった場合は、最低限度額の補償は発動しない。
    このときの契約期間の収入は、10万円になる。

    「別途報酬等」の正体は不明だが、まずは暮らせるだけの収入を得る方法を探そう。
    そして、今後生きていくために、何とか契約が継続できれば……

    そう考えている最中、ふと我に返る。

    (なぜハローワークの話を受ける前提で考えているのか?)
    あなたには▲▲社の話も来ているのだから、こちらの可能性もあるのだ。

    もし、▲▲社へ入社できれば、今の生活をするには月々の給与で十分なうえ、貯蓄だってできる。
    あなたは改めて、月曜日の面接対策にいそしむことにした。

    《続く》

  • 皮肉な「書類選考通過」!二股の誘惑?(10)vol.024

    月曜の朝、8時前に、あなたはすべての準備を終えた。
    8時半にハローワークに連絡を入れて、そのあとすぐに▲▲社へ向かう。
    携帯からかけて音が途切れたりすると厄介だから、自宅の固定電話からかけるつもりだった。

    しかし、契約締結の延期を要望するとして、一体どのくらい延ばしてもらえばよいだろうか。
    当然、先方もそれを訊いてくるはずだ。

    欲を言えば、▲▲社が不採用と判明するまで待ってほしい。
    ただ、さんざん日延べしたあげく、もしも内定が出たら、ハローワークへは顔向けができない。

    さらに欲を言えば、まず今回の1次面接の結果が出るまで契約の締結は待ってもらい、次の面接に進めれば、さらに待ってもらいたい。

    そうやって、もし3次くらいまで面接が実施された結果、内定になったら、その時点で断らせてもらいたい、が……
    ……さすがに、そんな虫のいい話、自分なら認めないと思う。

    あなたは、ひたすらにハローワークの開始時間を待った。

    《続く》

  • 皮肉な「書類選考通過」!二股の誘惑?(11)vol.025

    「現在、相談を希望している【法人】がたくさんありますので、本日の契約締結後、直ちに受付の選定作業にかからなくてはならないのです」
    8時半に、後ろめたい気持ちで恐る恐るかけた電話。

    担当官の声は、あなたの虫の良い考えを、早々に打ち砕いた。

    「先週お話ししたことですが、今回、欠員が出たための依頼ですので、もしお断りになると分かれば、すぐに別の候補者をあたらなければなりません」
    その場での決断を迫られた。最も恐れていたことだ。

    あなたの生活が、そして人生がかかったこの決断を、それこそ断腸の思いでしなければならない。
    しかも、早急にだ。
    沈黙するあなたに、担当官の声がさらに追い打ちをかけた。

    「このあと午前中に面接をお受けになっても、午後にハローワークとの契約を締結したら、速やかにそちらの会社へ辞退を申し入れて頂かなくてはなりません」

    (……)
    それでは、▲▲社の面接を受ける意味がない。
    やはり、ハローワークの依頼を断るべきだろう。
    あなたは受話器を握りしめ、ゆっくりと息を吸い込んだ。

    《続く》

  • 皮肉な「書類選考通過」!二股の誘惑?(12)vol.026

    あなたは受話器を置き、ガックリとうなだれて深いため息をついた。

    人生の道に現れた救い主が、せっかく差し伸べてくれた手を、あなたは悪魔のささやきに惑わされて、振り払ってしまったかもしれない。

    今この瞬間のあなたを見て悪魔はほくそ笑み、天使は悲しげに眉をひそめている気がする。

    結局あなたはハローワークの依頼を受けることにし、▲▲社のほうへは、「昨日からインフルエンザを発症したため行けない」と、嘘を言ったのだった。

    『別のところが決まったから』とは、あえて言わなかった。
    その “ 別のところ ” は、たった1回限りの契約なのだ。
    「決まった」などというフレーズは相応しくない。

    それに、病気が原因なら、万に一つ、別の日取りで面接が組まれるかもしれない。
    だからあなたは、▲▲社へ電話する前に、
    「完治したら是非、前向きに考えさせて頂きます」
    という言葉を準備しておいた。

    しかし、▲▲社の人事担当者は、
    「ではまたご縁がありましたら」と言って電話を切った。
    「お大事に」とも言っていた。
    是が非でもあなたが欲しいというわけではないと言い渡されたも同然だ。

    あなたはスーツの上着を脱いで足元へ落とし、ネクタイを外すと、くたびれたベッドの上に倒れ込んだ。
    しごとセンターのアドバイザーへ、断ったことを電話する気にはなれない。
    メールで連絡しておこうと思ったが、それも今すぐする気にはなれなかった。

    《続く》