日: 2017年7月29日

  • 青森県株式会社のケース(8)vol.078

    あなたの見るところ、社長の追い詰められかたは、かなり末期にきているとの確信がある。

    なぜかと言えば、このビジネスを始めるきっかけになった、友人との飲みながらの会話が、この場であなたに一言一句正確に語られたからだ。

    これは居酒屋で行われた会話だそうだが、それを【法人】が知っているということは、会話の内容を社内で再現したということになる。

    念のため質問してみると、ここ1年ほどの間に14回も繰り返されているという。
    あんな他愛のない、実務にも業績にも全く関係ない話が、だ。

    社員が新しく入ってきたときは必ず行われ、それ以外でも不定期に繰り返されており、周囲で聞いている社員たちの表現では「年々、脚色が加えられてドラマチックになっている」そうだ。

    (年々?)
    そこに引っかかったので、ついでにここ3年ほどに期間を広げて聞いてみると、なんと25回繰り返されている。

    この一年で前2年を超えるほどの急速の伸びを見せていることがわかる。
    やはりあなたの読みは当たっているようだ。
    現実逃避が始まっていると見てよい。

    「これは運命だから、きっと何とかなる」と自分自身に言い聞かせているようだ。

     

    (創業エピソードがいかに運命的だったか、は、社長の個人的な思いにすぎない)

    あなたはそう見ている。
    それが社員の共通認識になるほど神話化したいのなら、そのエピソードは現在の『地力』に裏打ちされている必要がある。

    北海道株式会社の社長が、父と創業社長が写った写真を、人知れず引き出しの中に飾っているのとは実に対照的だと思った。

    青森社に必要なのは、まずは実力だ。
    それも、計測可能な実力。

    もしくは経営者の人物力、つまり持っている人徳が社員に伝わっていること。
    運だけではダメだ。

    まず実力が必要だが、今のこの場合は「現時点で実力がないことを素直に認める力」が、その前に必要だ。

    コンサルティングっぽくなってきたなと、あなたは感じた。
    こういう場合、プロのコンサルタントは打開策の提示や経営者へのコーチングなどを行うのだろう。

    舵の取り方を間違えたら会社は沈んでいく状況の中でマーケットを分析し、時代のニーズを読み、生き残るための方策を導き出す。

    そして、それを成しうる力と、自社の実力とのギャップを埋める作業をしなくてはならない。

    (しかし、社長に何を言うかを考えても意味がない)
    あなたの相手は【法人】なのだ。

    その【法人】はさらにこう語る。
    「契約事務手続きを外注できる会社を探していたときに、システム会社が来て言うんですよね。『今の時代、攻めの飛び道具には事務が有効だから、外注は考え直すべきだ』って」

    《続く》

  • 青森県株式会社のケース(7)vol.077

    そんな理由で、青森県株式会社はこの事業の先駆者でありながら、オペレーションの組み立ては後から参入したどの企業よりも劣っていた。

    それでも、『他社にはない○年の実績』『官庁への導入実績』を強調し、競争優位を保つために早々と全国3か所に拠点を展開。

    売上は作れたが管理がザルのため会社に利益が残らず、無理という自覚がないまま進めた設備投資は資本構成を直撃した。

    70%超を誇った自己資本比率が急速に落ちて回復しないことに焦ってようやく管理体制を築こうとしたが、社長の、ものにこだわらない鷹揚さがここでも足かせになった。

    社員は派遣8名を含む25人、パートは6名という体制に膨れ上がってしまったのだ。

    なけなしの限界利益は主に人件費と家賃地代で消滅し、忙しくて活気があるように見えるオフィスには、いつしかジリ貧の影が見え隠れし始めていた。

    そんな内情を抱えているにもかかわらず急上昇を示したのは、もはや社長の実力というより、時代の流れだった。

    家具に限ったことではないが、『持たない価値観』の持ち主が増え、モノを所有するよりも、身軽さや快適さに重点を置く消費傾向に変わった世相の反映なのだろう。

     

    青森県株式会社は、膨れ上がったニーズの中、当初は先覚者として目立つ存在であり、アドバンテージを携えて時代の流れの中でリードを保ってきたが、運頼りだった点が結局はデメリットになった。

    地力の弱さが利益面に出始めると、追加投資の回収見込みが危うくなり、無借金経営の誇りは維持できなくなった。

    こうなってからいざ融資を頼もうと思っても、それまでは「何とか借りてくれ」と頭を下げてきた銀行も、簡単に首を縦には振ってくれない。

    社長の思惑はことごとく外れ、意思決定にも翳りが生じ、社内は何となくギクシャクしている。

    心のどこかでそれを自覚しているからこそ「流れは来ている」を連呼している気がする。

    あなたが今回【法人】に感じた第一印象は『よくしゃべる』だったが、それは不安を感じている社長の口数の多さを表しているのではないかと思う。

    《続く》